2009年秋の英検1級は、読解問題の難易度が高く、やたら時間を取られて苦しんだ人が多いようです。語彙、リスニング、英作文問題はいつもと同じレベルですが、リーディング問題での苦悩が尾を引き、他のセクションに打撃を与えた模様です。よってボーダーは、読解問題の平均が3点ぐらい下がると思われ、ライティングの採点を甘くしない限りは、いつもより数点は低く、78点ぐらい、ライティングの採点を甘くすれば80点ぐらいになるかと思われます。
まず、語彙問題ですが、英検1級に出題される単語は大きく以下の3つのレベルに分けることができます。
レベル1 5000〜8000語水準(基礎語彙) 主に準1級レベル
レベル2 8000〜12000語水準(必須語彙) 主に1級レベル
レベル3 12000語以上(完成語彙) 米国の大学院入試(GRE)レベル
上記3つのレベルを1000語掲載した当アクエアリーズの語彙テキストで、今回の2009年度第2回テストに出題された英検1級語彙問題21問のカバー率は、20問で 95%です。唯一カバーできなかった”peruse”はかつて有名だった「しけ単」に出てくる、大学入試語彙で、映画「摩天楼はばら色」でマイケルジェイフォックスが、”Peruse it(おどけて「じっくり読む」の意味).”と言って膨大な資料を同僚に読ませるシーンで使われ、私はその時以来emailでいつもこの表現を使っています。
また出題された21問の語彙問題をレベル別に分けてみると以下の通りです。
レベル1 5000〜8000語水準(基礎語彙) 主に準1級レベル4個出題・・・24%
shun, meddle, susceptible, avert, peruse,
レベル2 8000〜12000語水準(必須語彙) 主に1級レベル・・・10個出題・47%
bluff, deter, barrage, glitch, quandary, flagrant, tarnish, refute, impasse, languish
レベル3 12000語以上(完成語彙) 米国の大学院入試(GRE)レベル・・・6個出題・29%
完成7問 33% exuberant, caustic, inculcate, farce, cessation, mayhem
句動詞の方は、当アクエアリーズ出版の句動詞1000のテキストのカバー率は4問中3問で75%、また選択肢すべて、つまり16個の句動詞のカバー率は、12個で75%です。
全体的には、文脈はほとんど無視してコロケーションで解ける問題が21問中、語彙の達人なら21問(全体的に1~2分で解けます)、かなりの上級者で17問(2〜3分で解けます)で、詳しくは英検分析Part 2で述べていきます。
次に読解問題ですが、空所補充問題では、1つ目の英文の26、28番はやさしいですが、27番は”intrusive”がわからなかったりすると迷ったりするやや難し目の問題です、2つ目のDisaster Reliefは29番が迷った人が多く、これは伏線となっている第1段落だけではなく、第2段落まで通して読めば「illogical=not sensible」だと楽に解ける、いわゆる「速読要求型」難問です。
内容一致問題の1つ目のLegendary Bladesは、32番は消去法で解こうとした人は迷ったり、33番は「裏返しパターン型」の問題で、速読できない人は解くのに時間を取られたり、34番は”Damascus~emthods”の文頭にAlthoughを補って考え、運用レベルにして欲しい必須表現did not “compare favorably to”~(〜に比べてたいしたことないじゃん)がわかれば楽勝ですが、不正解の人が多かったややむずかしめの問題です。
2つ目のパッセージ”Encyclopedia Wars”は語彙力の少ない人は50個以上知らない表現があるのではないかと思われる、非常に言い回しの凝った英文です。また、背景知識があったりして内容を理解できれば問題はさほど難しくないと言いたいところですが、選択肢でもその理解に、oversight(見落とし)、on a par with〜(〜と同等で) distance oneself from〜(〜を敬遠する)などの表現を知っていないとできないかもしれません。
最後のThe World Turned Upside Down”は、地磁気に関する英文で、文系ばりばりの人にはきつかったでしょう。理系の話に弱い人は、毎週サイエンスのレクチャーが聞けるアクエアリーズの工業英検クラスを取って欲しいぐらいです。38番の問題も、語彙力、注意力の欠けている人は、liquidがmoltenの言い換えであることを見抜けずdistracter(誤答)の2(the intense heatとは書いていない)を選んでしまったり、39では so that the date of ~の部分がよくある「因果関係を入れ型」のトリック問題パターンを見抜けずはまってしまったり、挙句に焦って40番のNOTを見落としたり、41番も、1の選択肢は明らかに本文に反しているにもかかわらず、4の選択肢が巧妙すぎて「寸止め」ぎりぎりなために(前半はわかりやすいが、but以下はnot exactly sureとしないと誤解を招くかも)、それを選んだ人もいるかもしれません。いずれにしても本文も図に書いて説明すればわかりやすいですが、迷路に迷うと「頭爆発」の難問といえます。
全体的に、背景知識、語彙力があって速読が出来る人にはそれほど難しくなかったかもしれませんが、平均的英検1級受験者にとっては、選択肢も長いしこれほど時間のかかる頭の痛い問題を経験したこと無いと悲鳴を上げた人も多いことでしょう。よって普段から、アクエアリーズが授業で用いているエコノミストやサイエンティフィックアメリカンのようなハイレベルの英字誌を使った問題でトレーニングしておく必要があります。今回の読解問題の詳しい解説は、後日ネットマガジンでご紹介いたします。
リスニング問題に関して、選択肢を見ただけで25点以上を取れるノウハウを紹介していきますので乞うご期待! Let’s enjoy the process!(陽は必ず昇る!)
次に、語彙問題の解説を行います。
特に、英検1級の語彙問題の選択肢はコロケーション(語と語の自然な組み合わせ)を利用すれば簡単に解くことができますので、それを交えながら解説していきましょう。
1.
contemplative attitude(静観的な態度) contemplate(じっと見て考える)
erroneous information(間違った情報)
☆ exuberant (energy, personality, mood)(あふれるばかりの・熱狂的な)ジュワーッとあふれる感じ。「活気・性格」と主に結びつく
circumspect in one’s opinions((be)意見を述べるのに慎重な)、
2.
☆ bluff one's way out of (trouble, crisis, danger)(〜をはったりで切りぬける)「困難」と結びつく
defame someone((人)を中傷する)
syndicated crime(共謀犯罪)
☆ bungle the (operation, response, attempt)(やり損なう)「業務・対応・試み」と結びつきやすい
3.
grill a fish(網で魚を焼く)
☆ shun (responsibility, confrontation, temptation, publicity)(避ける・遠ざける)「責任・衝突」と結びつきやすい
slump down into a sofa(ぐったりソファに座る)
trample on others(他人を踏みつける)
4.
deter a criminal activity(犯罪活動を抑止する)
☆ revoke a (license, law, contract)(取り消す・無効にする)「免許・法律・契約」と主に結びつく
supplanted by a young player ((be)若手に取って代わられる)
☆ delineate the (picture, role, character, boundary)(描写する・輪郭を描く)「像・役割・境界線」と結びつきやすい
5.
caustic remarks(辛らつな批評)
pragmatic practice (実践練習)
studious efforts(熱心な努力)
orthodox opinion(正統的な見解)
6.
family squabble(家庭の言い争い)
thrust a desk forward(机を前に押し出す)
bestow an honor on someone((人)に名誉を与える)
☆ meddle in (politics, internal affairs, business)(〜に干渉する)「政治・ビジネス」と結びつきやすい
7.
☆ susceptible to (damage, disease, attack, pressure)(〜の影響を受けやすい)「被害・病気」と主に結びつく
☆ intractable (problem, pain, conflict)(手に負えない・治りにくい)「問題・痛み」と主に結びつく
discernible reason(目に見える理由)
deplorable behavior(嘆かわしい振舞い)
8.
turret clock(やぐら時計)
morsel of food(少量の食べ物)
☆ vestige of (tradition, Western culture, colonialism)(名残り・痕跡)「伝統・文化」と結びつきやすい
barrage of questions(矢継ぎ早の質問)
9.
glean information(情報を集める)
☆ avert (crisis, danger, disaster, catastrophe, defeat)(避ける)「危険」と結びつく
☆ erode one’s (confidence, freedom, power)(損なう・むしばむ)「信頼・自由・権力」と結びつきやすい
pare apples(リンゴの皮をむく)
10.
computer glitch(コンピュータの突然の故障)
snitch a purse(財布をくすねる)
electronic gadget(電子器具)
widget((名称が不明な)小型機械、装置)
11.
jetty harbor(突堤港)
triangular prism(三角柱)
economic quandary(経済苦境)
☆ swarm of (ants, bees, tourists, refugees)(群れ・群集)「昆虫・人」と主に結びつく
12.
☆ reiterate one's (support, commitment, opinion, position)(繰り返して言う)「支援・立場」と主に結びつく
☆ inculcate (the ideology[doctrine], virtues, discipline)(〜を教え込む)「道徳・教え」と結びつきやすい
☆ vacillate between (love and hate, consent and refusal)(揺れ動く)「相反するもの」と結びつく
cogitate(熟慮する)
13.
gallant deed(勇敢な行為)
☆ imminent (danger, threat, crisis)(切迫した)「危険」と主に結びつく
☆ flagrant (violation, breach, error)(極悪の・はなはだしい)「犯罪・誤り」と結びつく
celibate ([宗教的理由で]独身の、禁欲主義の)
14.
burnish metal(金属を磨く)
I'm famished.(私は腹ぺこだ)
garnish a room with flowers(部屋を花で飾る)
tarnish one's image((人)のイメージを傷つける)
15.
facet of a diamond(ダイヤモンドの一つの面)
craze for health foods(健康食ブーム)
perform a farce(茶番を演じる)
economic crunch(経済的危機)
16.
cognitive ability(認知能力)
sense of humiliation(屈辱感)
☆ depict the (scenes, event, reality, history)(〜を描く)「場面・出来事」と結びつきやすい
cessation of activity(活動停止)
17.
percolate sea water(塩水をろ過する)
refute a claim(主張に異議を唱える)
☆ placate (one’s anger, protesters, critics, customers, investors)(なだめる・静める)「怒り・(怒る)人々」と主に結びつく
extort a confession from someone((白状させる)
18.
reach an impasse(行き詰まる)
apex of one's career(人生の絶頂期)
onus for passenger safety(乗客の安全を守る責任)
echelon formation(梯形(ていけい)編隊)
19.
snub one's noses at someone((人)を冷たく鼻であしらう)
waylay someone((人)を待ち伏せする)
☆ edifying (speech, sermon, book, story)(啓発する、為になる)「話」と結びつきやすい
peruse a book(本を熟読する)
20.
flourish in a country(〜が国で栄える)
nourish an animal(動物を育てる)
☆ languish in (prison, jail, poverty)(惨めに暮らす・衰える)「刑務所・貧困」と結びつきやすい
brandish a sword(剣を振り回す)
21.
felicity of marriage(結婚の幸福感)
scene of mayhem(騒乱の現場)
☆ repose one's (trust, hope, confidence) in someone(人に(信頼を)置く)「信頼・希望」と結びつきやすい
malicious telephone calls(悪意のあるテレフォンコール)
22.
throw in a joke(ジョークをはさむ)
stamp out a crime(犯罪を撲滅する)
strike up a conversation(会話を始める)
glance off one’s shield([矢などが]盾をかすめる)
23.
rifle through one’s pocket(ポケットをくまなく探す)
lash out at someone((人)を厳しく批判する)
The road was paved over.(道が舗装された)
rattle off every name(名前をスラスラ言う)
24.
Good news hasn't sunk in yet.(良い知らせがまだピンとこない)
gloss over a mistake(失敗をごまかす)
drift off in the lecture(授業中に眠りに落ちる)
The rumor floated around.(うわさが広まった)
25.
live down one's shame(恥を償う[時と共に忘れる)
dash off a letter(手紙を書き殴る)
firm up the details of agreement(契約の詳細を固める)
dote on one's child(子供を溺愛する)
今回のライティング問題は比較的簡単でしたが、思ったより時間が取られた人が多いようです。事実、30分以上かかってしまい、その結果、リスニング問題「選択肢分析答え割り出し戦法」も使えず、おまけに考えすぎて頭が疲れ果ててしまい、リスニング問題を解くエネルギーがかなり打撃を受けた人が非常に多かったようです。そこで、この問題のスコアを伸ばすには、エッセイライティング問題に取り組む基本姿勢「3分で構成を英語で考え、24分で書き上げ、3分で英文を最終チェックする。」をふまえ、普段から毎週最低1つのエッセイを手書きで読みやすい活字体で書いて添削を受ける必要があります。
さて今回の問題 ”Are people in modern society losing their moral values?”は、PointsがEducation, Family relations, Materialism, Public Manners, Religion, The Internetで、明らかに肯定側の方が書きやすいことがおわかりでしょう。1級のエッセイライティング問題の場合、まずキーワードを見て即座にどちらのスタンスが書きやすいかを見抜き、そして次にどれがキーアイデア、つまりパラグラフのメインポイントになり、どれがサポート(例証)部に使うべきものであるかを判別し、アーギュメントをオーガナイズする必要があります。
まず1つ目のEducationはキーアイデアとして使え、例えばInsufficient moral education at school is hampering the development of character [emotional intelligence], thus leading to moral degeneration in society[seriously affecting people’s moral values].のようにトピックセンテンスを作ることができます。そしてそれをサポートするのは、受験中心の知育偏重型の教育がいびつな性格を生み出し、その子達が大人になってもそれが直らないことを述べていけばいいでしょう。
2つ目は、Family relations lacking in parental discipline and love today are causing a moral decline among young people, thus increasing juvenile delinquency. のようにトピックセンテンスを作ることができ、「家庭での躾や愛の無さが非行の増加やpublic manners(これはサポート部分に使える語です)の低下につながり、その子達が大人になってもそれが直らないまま社会全体のモラルの低下につながる。」というふうに論を展開していけばいいでしょう。
次に作りやすいのは、最後の”The Internet”で、Harmful sites on the Internet are undermining people’s sense of morality. のようにし、ポルノや出会い系や自殺の仕方や中傷などのサイトが人々の道徳観を蝕んでいることを述べていけばいいでしょう。
皆さんいかがでしたでしょうか。エッセイライティングで重要なのは3C(clear, correct, concise)です。ですから、まず字がきれくて読みやすいこと、しかも適度の文字の大きさ(1行に10語ぐらいが目安)で書くことが大切です。これだけでも3点以上の違いが出てきます。それからポイントがはっきりわかるようにキーワードにもアンダーラインを引いて(わかりやすい!)、それをサポートする例証部分を作ります。英語では1パラグラフに1ポイントを述べてそれをサポートするのがルールですから、それを守って話がそれないようにしましょう。またキーアイデアを頭に持ってきて例証すれば、ポイントが明確になるのでオーバーラップしにくいので、是非それを励行しましょう。
オーガニゼーションをよくすることでメッセージがクリアになり、スコアがぐーんとUPします。そして必ず読み直して、文法・語法ミスがないかをチェックしましょう。見直してみると案外ミスが多かったりして、これが発見、訂正できるだけでも3点以上変わってきますよ。字が汚くて読みにくく文法ミスも多いと、いくらアーギュメントがよくても、それだけで20点以上が取れなくなってしまうので注意しましょう。それでは皆さん、明日に向かってエッセイライティングの道を、
Let’s enjoy the process!(陽は必ず昇る!)