2011年度 第1回 英検1級問題分析と対策
2011春の英検1級は語彙がやや難しく、読解は易しく、エッセイは普通レベル、リスニングはやや難しく、全体的にはいつもより若干易しめで、合格点は79点前後になりそうです。アクエアリーズの講座受講者で受験者のフィードバックによると、タイムマネジメントに失敗して実力を発揮できなかったという人から、いつもより語彙と読解が伸びたので5~6点伸びたという人から、実力を存分に発揮できて前回よりも30点近く伸びている人まで様々です。とにかく英検1級合格を確かなものにするには、読解・リスニング問題でより高い点が取れるように、語彙問題を10分で解き、エッセイを20分で仕上げて、両方を30分で終えて合計で40点取れるようにする必要があります。そうすることによってリスニング問題の「先読み(選択肢を読んで問題を予測する)」ができれば、あの難しいPart 2, Part 4の問題で圧倒的に有利に対処できるようになり、また読解問題にもより時間をさくことができるので早とちりも少なくなります。これらはトレーニングによって達成可能なので絶対に頑張りましょう。次に個別に問題を見ていくことにしましょう。
語彙問題分析と攻略法
英検1級に出題される単語は3つのレベルに分けることができ、今回出題された語彙を、当アクエアリーズ出版の「英検1級対策ボキャビルテキスト」で調べてみると、解答となる問題のカバー率は21問中18問の86%となりました。さらに過去問題20年に基づく「英検1級頻度別語彙リストTop 1000(頻度順に100リストUP)」を加えると、90%のカバー率になります。
レベル1 5000~8000語水準(基礎語彙) 主に準1級レベル・・・2個出題(9%)
longevity(2回・準1級補足), imprudent(7回・1級語彙Top100)
レベル2 8000~12000語水準(必須語彙) 主に1級レベル・・・12個出題(57%)
ambivalent(1回・ナシ), thwart(4回・1級語彙Top200), stringent(5回・1級語彙Top100), tout(2回・1級語彙Top400), expedite(3回・1級語彙Top400), laudable(3回・1級語彙Top700), defunct(2回・1級語彙Top600), grueling (1回・ナシ), revel(1回・ナシ), sedentary(3回・1級語彙Top400), recluse(3回・1級語彙Top400), inquisitive(1回・ナシ)
レベル3 12000語以上(完成語彙) 米国の大学院入試(GRE)レベル・・・4個出題(19%)
catalyst(1回・ナシ), traverse(1回・ナシ), hoax(1回・ナシ), accrue(3回・ナシ)
カバーできなかった3つの単語は「英検1級頻度別語彙リストTop 1000」で1つカバーされています。
・concussion(1回・ナシ) severe, mildの程度の形容詞やbrainなどと結びつく
・annotate (3回・ナシ) annotatedの過去分詞の形で書籍関係の単語と結びつく
・teeter(2回・1級語彙Top800) teeter on the brink [edge] of ~の形でよく使用される
※1 英単語の後にある( 回)の表示は、過去20年間の英検準1級語彙問題に選択肢として出題された回数。
※2 1級Top・準1級Topの表示は当アクエアリーズ校の準1級・1級で覚えるべき1000の単語を
Top100からTop1000まで、10段階に100語毎に分けられた単語のレベル。
また、句動詞は、アクエアリーズ出版の「句動詞1000」のテキストにおける解答のカバー率は4問中4問の100%で、解答を含めた句動詞の選択肢のカバー率16問中12問と75%となりました。さらに、句動詞の研究を進め、新しく作成した「準1級・1級句動詞頻度別リストTop 600(準1最重要100 / 準1重要100 /1級最重要200 /1級重要200」では、act up(準1級重要100), fritter away(1級最重要200), stumble upon(1級最重要200)の3つの75%をカバーしました。
語彙問題の傾向として、通常文脈をほとんど無視してコロケーションで解ける問題がほとんどだったのですが、今回は多少文脈で解く必要のある問題が増えています。アクエアリーズの『英検1級語彙スーパーボキャブラリー教材』や『発信型英語10000語レベル スーパーボキャブラリービルディング(CD3枚付) 』で、「発信型ボキャビルトレーニング」を実践している人なら全体を5分ぐらいで解いて満点か満点近い点が取ることが可能です。実際、今回の英検も多くの当校の受講者が満点に近い得点を取っています。
語彙問題は、NC(no-context型でコロケーションだけで解ける問題)、SC(semi-context型でコロケーションと空所の数語の文脈で解ける問題)、FC(full-context型でほとんど全文を読まないと解けない問題)の3つに分かれますが、英検1級の語彙問題の場合、意味・用法・コロケーションの限られたハイレベルな語彙が多いので、運用語彙の豊富な人なら、ほとんど文脈なしでコロケーションで解けるNC、SCタイプの問題の割合が高くなります。
特に、英検1級の語彙問題の選択肢はコロケーション(語と語の自然な組み合わせ)を利用すれば簡単に解くことができますので、それを交えながら解説していきましょう。
1番は、his girlfriend winning the national beauty contestという現実に対して、was pleased ~, but felt ~と彼の2つの感情が示された文脈から解く「7秒問題」。
2番は、mountaineers’ efforts(登山家の試み)からthwart(妨げる)とコロケーションで解ける「1秒問題」。
3番は、current standards are too lowという信念から、regulations ~ be made more stringent(規則をさらに厳しくすべき)と文脈で解く「7秒問題」。
4番は、be ~ as a cure for the common cold のフレーズから be touted as(~とうたわれる)とよく使われる文[フレーズ]の型で解ける「1秒問題」。
5番は、the process(プロセス)からexpedite(促進する)とコロケーションで解ける「1秒問題」。
6番は、the prime minister’s promise ~ からlaudable(賞賛に値する)と文脈で解く「5秒問題」。
7番は、hit his headから(brain) concussion(脳震盪)と文脈で解く「3秒問題」。
8番は、 translation of the ancient Hindu text(古代ヒンドゥーの原書の訳)からannotate(注釈する)とコロケーションで解ける「3秒問題」。
9番は、on the brink of ~(~の寸前で)からteeter(さまよう)とイディオムで解ける「1秒問題」。
10番は、improved healthcare(改善された医療)からincrease human longevity(ヒトの寿命が延びる)と文脈で解ける「3秒問題」。
11番は、companyからdefunct(消滅した、つぶれた)とコロケーションで解ける「3秒問題」。
12番は、trek((徒歩による)小旅行)からgrueling(ヘトヘトに疲れさせる)とコロケーションで解ける「1秒問題」。
13番は、for his change からcatalyst for ~(~の触媒・促進する働きをするもの)とコロケーションで解ける「1秒問題」。
14番は、in the freedomからとrevel in(~を大いに楽しむ)とコロケーションで解ける「1秒問題」。
15番は、vast plains(広大な平原)からtraverse(横断する)とコロケーションで解ける「1秒問題」。
16番は、lifestylesからsedentary(いつも座っている)とコロケーションで解ける「1秒問題」。
17番は、文脈のAfter receiving a call saying there was a bomb at the university ~ They (police) found nothing.から hoax(悪ふざけ、いたずら)と解ける「7秒問題」。
18番は、lost most of his fortuneの文脈で、investmentからimprudent(軽率な)とコロケーションで解ける「5秒問題」。
19番は、文脈のretired やmoved to a remote areaからrecluse(世捨て人・隠遁者)と解ける「5秒問題」。
20番は、文脈のloved exploring her surroundingsなどからinquisitive(好奇心の強い)と解く「5秒問題」。
21番は、interest(利息)からaccrue(増える)とコロケーションで解ける「1秒問題」。
22番は、machineからact up(故障を起こす)とコロケーションで解ける「1秒問題」。
23番は、文脈のevents leading up to the murder(殺人につながる事件)からpiece together((事実・情報)をつなぎ合わせる)とコロケーションで解く「3秒問題」。
24番は、timeからfritter away(浪費する)とコロケーションで解ける「1秒問題」。
25番は、nice lampをstumble upon(偶然見つける)と文脈で解く「5秒問題」。
2011年度第1回英検1級語彙
1. ☆ rigorous (training, check, test, standards)(厳しい)「検査・基準」と主に結びつく
☆ prolific (scorer, writer, composer, bird)(多産[多作の])「スポーツ選手・創作家・動物」と結びつきやすい
☆ staunch (supporter, advocate, opposition)(筋金入りの)「支持者・反対者」と主に結びつく
ambivalent feeling(あいまいな気持ち)
2. ☆ thwart one’s (attempt, efforts, plan, conspiracy, ambition, desire) (阻止する・妨げる)
「企み・計画・野望」と主に結びつく
enthralled by someone’s story((be)(人)の話に魅了される)
malign a politician(政治家を中傷する)
☆ nurture a (spirit, dream, child, relationship)(育む・養育する・助成する)「精神・子供・関係」と結びつきやすい
3. insurgent army(反乱軍)
subservient position(従属的な立場)
☆ pungent (smell, odor, criticism)(辛らつな・鼻につんとくる)「臭い・批評」と結びつきやすい
☆ stringent (rule, regulation, requirement)(厳しい)「規則・要求」と結びつく
4. touted as a superstar((be) 大スターとしてもてはやされる)
forfeit one’s right((人)の権利を没収する)
☆ perturb (the system[order], one's mind)(かき乱す)「制度・秩序・精神」と結びつきやすい
detract from the appeal(価値を損なう)
5. expiate one's crime(罪を償う)
predominate in some areas (~がある地域では優位である)
☆ expedite the (process, construction, business, decision)(促進する・はかどらせる)「プロセス・仕事」と主に結びつく
promulgate one's belief(信仰を広める)
6. personable lady(容姿端麗な女性)
☆ laudable (goal, attempt, objective)(称賛に値する)「目標・試み」と主に結びつく
perceptible change(認識できる変化)
irascible reply(怒った返事)
7. brain concussion(脳震盪(とう))
deposition of sediments堆積物の沈着)
convection heat(対流熱)
calibration of flight instruments (飛行計器の目盛り)
8. saturate water with sugar(水を砂糖で飽和させる)
annotate a book(本に注釈をつける)
☆ hamper the (progress, development, efforts)(妨げる・阻む)「発展・努力」と結びつきやすい
☆ vindicate one’s (decision, claim, action, conduct)(正当性を立証する)「主張・行動」と主に結びつく
9. soaring cost(高騰する価格)
☆ fetter one’s (freedom, liberty, movement)(束縛する) 「自由・動き」と結びつきやすい
defect from the country(離国する)
teeter on the brink of extinction(絶滅寸前にある)
10. ☆ redolent of the (smell, late 60s, good old days)(~の匂いのたちこめた・~をしのばせる)「匂い・時代」と主に結びつく
elocution lesson(話し方のレッスン)
longevity society(長寿社会)
dissipation of heat(熱の放散)
☆ dissipate (money, fortune, energy, heat)(浪費する・散らす)「お金・エネルギー」と主に結びつく
11. ☆ defunct (company, government, practice, law)(現存しない・廃止された)「組織・慣習」と主に結びつく
insular community((島のような)閉鎖的な地域社会)
☆ wanton (killing, destruction, violence, vandalism)(抑制できない・勝手気ままな)「破壊行為」と結びつきやすい
suave gentleman(温厚な紳士)
12. ☆ grueling (task, training, race, battle, schedule)(厳しい・必死の)「仕事・争い」と主に結びつく
succulent fruit(水気の多い果物)
litigious society(訴訟社会)
inveterate liar(根っからの嘘つき)
13. bitter diatribe(痛烈な批判)
☆ catalyst (action, activity, change)(触媒)「作用・変更」と結びつきやすい
have a relapse(病気がぶり返す)
avarice of man(人間の強欲さ)
☆ avaricious (person, nature, disposition)(欲深い・貪欲な)「人・性格」と結びつく
14. trickle down the window((雨が)窓を伝って流れ落ちる)
prowl around the street(通りをうろつき回る)
revel in one's success(成功を大いに喜ぶ)
droop one's head(うなだれる)
15. regale someone with an amusing story
(面白い話で(人)を楽しませる)
☆ fumble (a ball, for words, in one’s pocket,)(しくじる・探す)「物・言葉・場所」と結びつきやすい
muster one's strength(力を奮い立たせる)
traverse the plains(平原を横断する)
16. ☆ sedentary (lifestyle, job, worker)(座ることの多い)「生活・仕事」と主に結びつく
kindred spirit (気の合う者同士)
obsequious manner(こびるような物腰)
☆ furtive (movements, glances, affair)(人目を忍んだ)「動作・情事」と結びつきやすい
17. legion of followers(多数の追随者)
make a foray into a village(村を襲撃する)
play a hoax on someone((人)にいたずらする)
wharf hotel(波止場のホテル)
18. imprudent driving(軽率な運転)
☆ prudent (management, conduct, opinion, manner)(慎重な・懸命な)「行為・態度」と結びつきやすい
defamatory remark (中傷的な発言)
cavernous theater(中ががらんとした大きな劇場)
☆ derogatory (remarks, comment, name)(軽蔑的な)「発言・言葉」と結びつく
19. liaison between the different groups(別グループ間の連絡(係))
social recluse(世捨て人)
political pundit(政治通、政治の専門家)
political charlatan(ペテンの政治家)
20. sullen face(むっつりした顔)
petulant child(すねた子ども)
momentous events(重大な出来事)
☆ inquisitive (mind, spirit, bystanders, reporters)(探求好きな・せんさく好きな)「気性・人」と主に結びつく
21. accrued debt(累積した赤字)
☆ undulating (countryside, hill, landscape)(起伏する・波打つ)「地形」と結びつく
surmise someone's emotion((人)の気持ちを推量する)
hibernate throughout the winter(冬ごもりをする)
22. burst in with one’s knife(ナイフを持って押し入る)
lash out against someone((人)を厳しく非難する)
The machine is acting up.(機械がうまく動かない)
act up at the store(店でいたずらをする)
buckle down to work(仕事に精を出す)
23. shrug off someone's advice((人)のアドバイスを無視する)
bottle up one's anger(怒りを抑える)
rub off the rust(さびをこすり落とす)
rub off on teammates((気分などが)チームメートに伝わる)
piece together the situation((事実・情報をつなぎ合わせて)状況を理解する)
24. fritter away a fortune(財産を浪費する)
choke back one's tears(涙をこらえる)
weed out corruption(汚職を排除する)
bridle at someone((人)に憤慨する)
25. The rain began to ease off.(雨が和らぎ始めた)
ease off on the speed(スピードをゆるめる)
lay into someone for lying(嘘をついたことで(人)を非難する)
stumble upon someone (((人)に偶然出くわす)
puzzle over a problem(問題に頭を悩ませる)
読解問題分析と攻略法
読解問題に関しては、内容一致問題はほとんどの受験者がいつもより簡単で速く解けたと言っていますが、穴埋め問題は少し難しかったようで、2問以上間違った人が多く見られ、特に2つ目の問題のミスが多いようです。内容一致問題は全体的にとっときやすいですが、2つ目のHoneybees and CCDの34の問題はやや難しめの問題です。
1つ目のUnexpected Economicsの方は、26と28は簡単ですが、27を早とちりして間違った人が多いようです。Surprisinglyとか、To their surpriseとかが述べられておれば簡単なのですが、27は空所の周辺だけ読んで解いた人はうっかり2番を選ばれたようです。2段落全体を読むと、”late pickups did not return to their pre-fine levels”, “but failed to achieve its desired effect”から、2番のdropped to almost zeroは合わず、3番は無関係で、4番のshowed no change overallも不正解であることがわかります。これは2段落にまたがっているタイプの難易度の高い問題です。
2つ目のThe Big Burnは、まず29の問題はいい問題です。1番の alerted the government to(政府に~を警告した)と 2番のset the stage for(~のお膳立てをした)との選択に迷った人がいるかもしれません。3番のwere attributed to[~のせいである]は因果関係が逆になっていて、よく使われる典型的なdistractorです。「気候が未曾有の出来事を(に)「~した」の問題で、「旱魃(かんばつ)が火事をあおり、強風が大火事を引き起こした」というサポートから、2番のset the stage forの方が数段いいことがわかりますが、次の段落でThe US Forest Service ~とあるので、うっかり1番を選んでしまいそうになりそうですが、サポート部をしっかり読んで1番のdistractorにはまらないようにしましょう。この問題も、A drought~の前に、In factか何かが欲しいところです。
次の30の問題は、「政府に資金要求をした努力が、commercial interest(大企業側)によって~された」の問題で、これもHis effortsの前に、Howeverが述べられておれば簡単な問題になるのですが、そえがなくて面食らった人もいるかもしれませんが、次のMany big businesses treated America’s forests as an inexhaustible resource that was theirs for the taking, and they lobbied hard against conservation(大企業は森を無尽蔵の資源とみなし森の保全に猛反対した)から答えがわかります。このinterestsは多義語で、「企業」の意味があることを知っていれば楽に解けます。このように、穴埋め読解問題は、文と文を論理的につなぐ接続詞が述べられていない、cohesionの悪い英文を用いて出題されることが多く、それらを解くには「国語力」と「語彙力」の両方が要求されます。
今回の内容一致問題は全体的に難易度が低く、2つ目のパッセージの最後の問題37(What is implied
in the final paragraph of the passage?)だけは不正解者が多かったようです。最後の段落のポイントは「バイキングがフランク王国の脅威を知っていたという証拠も無く、キリスト教の修道士のバイキングの残忍さの誇張とも言われている」の内容に対して、1番はsimilar to theirsがおかしく、2番はexaggerateしたのはCharlemagneではなく、3番はVikings had already fought off invasionsが間違いです。最後の4番は、「バイキングの暴力行為は意図的にキリスト教徒を怖がらせるようとしものではなかったようだ」というわかりにくい選択肢ですが、これがまだ一番ましな答えと言えます。うっかりと1番を選んだ人は、選択肢の半分が正しく半分が誤情報は平均的レベル、4分の3以上が正しい場合は難レベルの問題であるということを認識しておいてください。