2011年秋 英検準1級問題分析と対策

2011年秋の英検準1級問題は、語彙問題はやや難しく、読解問題はやさしめで、レターライティング問題とリスニング問題は平均レベルで、トータルでは合格点が69点からもわかるように、平均的レベルです。さて、この準1級は、受験者のレベルが2級以上の中で、偏差値60ぐらいで合格できる、大学で言えば上智大学合格レベル、TOEICのスコアでは750点レベルで、一般の大学生がパスできるレベルではありません。しかし、この準1級に確実に合格できる英語力が身につけば、バイリンガルニュースや英字新聞がエンジョイでき、社会問題について英語で意見を述べられるようになるので、”asset value”の高いスキルといえます。そして、このチャレンジングな試験に合格するには、次のような能力とタイムマネジメントが必要です。

 

英検準1級は制限時間が90分ですが、その時間内に問題を解くには、

語彙セクション:15

読解セクション:穴埋め問題10分×2題+内容一致問題15分×3題=55

レターライティングセクション:20

 

の計80分で問題を解き終わり、残りの10分間で、リスニング問題の選択肢を見て予測するのが理想ですが、これより読解問題やライティング問題で10分オーバーしてしまうと、リスニング問題を先読みする時間も、90分頭を酷使した頭を休める時間も無くなるので、フルにリスニング力を発揮できない可能性が高くなります。そこでどうしても、読解やライティングで75分はかかってしまう人は、効果的ボキャビルによって、語彙セクションを12分以内に解き、せめて3分ぐらいはリスニング問題の選択肢を先読みする時間を捻出しましょう。

 

また、スコア面では、語彙問題で最低15点、できれば18点、読解問題で18点、できれば20点、レターライティング問題で最低10点、リスニング問題で最低22点、できれば25点取る必要があります。特に難しいのは語彙とリスニングセクションでしょう。前者は、効果的かつインテンシブなボキャビルをしないとクリアできないでしょうし、前者は交換留学をするか、日本で勉強する場合は効果的なマテを用いて十分なトレーニングをする必要があります。

 

1級試験の大きな特徴の1つは、1番の語彙問題のレベルが高いことでしょう。語彙レベルは、英検3級が1000語水準、準2級が2000~2500語水準、2級が4000~5000語水準とすると、準1級が6000~7500語水準、1級が10000~12000語水準となっており、準1級の語彙問題で高得点を取るには、「Data Base 5500(桐原書店)と、アクエアリーズ出版の英検1級・準1級基礎レベル語彙(5000800語水準)を用いてボキャビルすることをお薦めします。今回の問題の場合、出題率は次のようになっています。

 

レベル1  40005500語レベル大学入試 Database 5500(桐原書店・ASC1級クラス使用)

・・・14個出題(66%

collaborate(3・準1級語彙Top 300), reckless(32級語彙), tyrant(1・ナシ),

*1 dispose(4・準1級語彙Top 200), stun(3・準1級語彙Top 400),

*2 precedent(5・準1級語彙Top 400), interrogate(2・準1級語彙Top 1000),

glare(3・準1級語彙Top 700), contemplate(2・準1級語彙Top 900),

*3 incomprehensible(3・準1級語彙Top 700), observance(12級語彙),

pious(2・準1級語彙Top 800), relic(3・ナシ, designate(4・準1級語彙Top 200)

*1 disposedisposableでカバー。 *precedentprecedeでカバー。

*3 incomprehensible comprehensiveでカバー。

 

レベル2 50008000語水準(基礎語彙・ASC出版) 主に準1級レベル・・・9個出題(43 %

 collaborate(3・準1級語彙Top 00), *1 dispose(4・準1級語彙Top 200),

interrogate(2・準1級語彙Top 1000), glare(3・準1級語彙Top 700),

scrub(3・準1級語彙Top 800), autonomy(2・準1級語彙Top 00),

grumble(・準1級語彙Top 400), *3 incomprehensible(3・準1級語彙Top 700),

designate(4・準1級語彙Top 200)

*1 disposedisposableでカバー。 *3 incomprehensible comprehensiveでカバー。

 

重複を省いた レベル1とレベル2の 合計数は「17個」でカバー率は「81%

 

カバーできなかった4つの単語は「英検準1級頻度別語彙リストTop 1000」の補足で2つカバーされています。

complication(42級語彙) 「困難な状況・や困難のもと」の意味だが、complicated「複雑な」で類推できる。

dent(1・ナシ) dent(へこみ、くぼみ)、よく使われるmake a dent in で「~に不利な影響をもたらす・~を減らす」という意味になる。

annoy(32級語彙) 大学入試レベルの単語

rapidity(1・ナシ) rapidだと準2級~2級レベルの単語なので簡単。

 

1 英単語の後にある回数の表示は、過去20年間の英検準1級語彙問題に選択肢として出題された回数(今回の出題を含む)

21Topの表示は当アクエアリーズ校の準1級・1級で覚えるべき1000の単語を

    Top100からTop1000まで、10段階に100語毎に分けられた単語のレベル。

 

また、コロケーション(語と語との結びつき)で文全体を読まなくても3秒で解ける問題が14問、5秒で解ける問題が4問、文全体の文脈で解く問題が3問となっており、語彙を覚える時のコロケーションの重要性を物語っています。例えば、collaborate on the project(共同でプロジェクトに当たる)reckless driving(無謀な運転)dispose of waste(ごみを処理する)set a precedent(前例を作る)a dent in the car(車のへこみ)glare from the sun(太陽のまぶしい光)scrub the floor(床をこする)grumble about one’s job(仕事について不平を言う)observance of Labor Day(労働者の日の遵守)relics of ancient civilization(古代文明の遺跡)designate as the manager(~を部長に任命する)などは、コロケーションの知識があれば一瞬で解けます。ボキャビルをする時に、語彙集などで単語の意味を覚えるのではなく、その語彙とよく結びつくフレーズを年の数だけ音読して語呂で覚えるというアプローチが重要です。

 

1級の句動詞の問題は、準1級レベルのものと1級レベルのものから構成されており、1級の問題とはさほど変わらす、今回の問題の場合、アクエアリーズ作成の「必須句動詞リスト600(1級最重要句動詞100+準1級重要句動詞1001級最重要句動詞2001級重要句動詞200より構成)の中から出題率を調べてみると次のようになります。

 

1級最重要句動詞100get at(=drive at)(~を言おうとする:22番の1で解答の選択肢)、take to(~を好きになる:22番の3)come into(~を相続する:23番の4で解答の選択肢)wear off(効果などが切れていく:24番の4)go under(破綻する:24番の2)

1級重要句動詞100hold off(~を阻止する、遅らせる:25番の2)run out(尽きる:24番の1)

1級最重要句動詞200brush off(~をはねのける:23番の3)sink in(理解される、浸透する:25

番の3)

1級重要句動詞200ride out(~を乗り越える) wind up(~の結果となる、~を終える:24番の3

解答の選択肢)

 

つまり解答で見れば、4個中3個の75%、用いられた16の選択肢で見れば、準1級最重要が5個で31%、準1級重要が2個で13%の計44%1級最重要が2個で13%1級重要が2個で13%の計26%のトータルで70%となっています。カバーできなかった残りの30%のうち、shut down(閉鎖する)はコンピューター用語でわかるでしょう、put through(電話をつなぐ)は簡単な英会話表現で, take down(取り壊す、書き留める)downの語感から、bring out(引き出す、売り出す)outの語感から推測できるでしょう。25番のpile in(どっと入ってくる:pileは「積み重なる」)が答えの問題は、消去法でも解けるし、文脈から「入ってくる」を表すinの語感でも解くことができます。

 

また、4問中3問、つまり22番のWhat are you (trying to) get[drive] at?(何が言いたいの?)23番のcome into お金(お金を相続する)24番のwind up in (~に終わる)の問題はコロケーションの知識でも解くことができます。このように、句動詞は必須300をコロケーションの音読によって覚えていけば対処することができるので、諦めずに頑張りましょう。

 

次にリーディングセクションですが、今回は穴埋め問題では、Fossil Hunters27番と、Native Plants30番がやや難しい問題と言えます。

 

まず1つ目のパッセージ、Fossil Huntersは、最近、勝手に化石を発掘して違法に売る人が増えている中、その証拠が残らない状況に対して、paleontologist(古生物学者)26番「~である」という文脈で、What troubles paleontologists(古生物学者を悩ませている)とあるので、「懸念を示している」というネガティブな選択肢が当てはまるので2が正解になります。他の選択肢はすべてポジティブなのですぐに消去できるでしょう。これは穴埋め問題の3つのタイプの1つ「ポジネガ型」です。

 

27番は、米国の法律が「~である」に合うものを選ぶのですが、その後の「公の地の化石は自由にとって売ることができる」という文脈から、liberal(=allowing a lot of political and economic freedom and supporting gradual social, political, or religious change)の意味がわかれば、即座に1を選ぶことができるでしょう。ちなみにこの問題の選択肢は、1(more liberal)3(more effective)の型がよく似ていると思いませんか。こういったのを「共通事項」と読んでいますが、リスニング問題の場合と同様に、こういった共通事項を持った選択肢はどちらかが答えであることが多いのです。

 

最後の問題は、穴埋め問題の3つのタイプの1つ「文の結合型」です。これは大きく「逆説タイプ(しかし)」と「順接タイプ」に分かれ、後者はさらに「因果関係(なので)」、「例証(たとえば)」、「追加・強調(さらに、事実)」に分かれ、難しいのは「追加・強調型」です。28番の場合、前文が、in fact(強調)で、その後、追加情報を述べているので、4のmoreoverが正解となるやや難しい問題と言えます。

 

次のNative Plantsでは、30番がやや難しく、最近エココンシャスな園芸家外来種ではなく土着の植物を優先していながらも、「~である」という逆説の文脈で、1の「remain unconvinced(それでも懐疑的である)」というネガティブ選択肢が正解であるのは、その後の「外来種を選んでもそれほど悪くは無い」という流れからもわかります。これは「ポジネガタイプ」の問題です。

 

内容一致問題では、The Amish and Technology37番が、準1級では難しいレベル(1級では普通レベル)です。正解は2で、”Not even the Amish themselves are in complete agreement”を、Despite disagreements among themselvesで言い換え、”The Amish, however, remain committed to being the masters and not the servants of technological progress, driven by their belief that it could affect their time-honored traditions and lifestyles.(テクノロジーの進歩が彼らの伝統に悪影響を与えかねないと信じて、絶対に技術の進歩に翻弄されないぞと)「裏返した」the Amish are determined to prioritize their traditions over the use of technology(絶対にテクノロジーより自分たちの伝統を優先する)の選択肢を、行間を読んで選べますか。他の選択肢は、13はすぐに消去できるでしょうが、4は少し厄介な、いわゆる「微妙な誤答(distracter)です。frequent adoptionwill likely lead to changes in core Amish beliefs「言い過ぎ」で、本文ではfrequentとも言っていないし、本文ではcould(25%ぐらい)が使われているのに、選択肢ではwill likely(75%ぐらい)になってしまいます。こういった「言い過ぎ」に「話を膨らせるタイプ」と「全く書かれていないことを述べるタイプ」の2つがあり、全誤答の約6割を占めます。しかし、こういった難問でも、パラグラフ全体を速読してポイントを素早くつかむトレーニングすれば難なく解くことができるようになります。

 

それからもう1つのパッセージ、The Role of Petroleum in Our Lives41番の問題がやや難しいと言えます。これはthe petroleum-based chemicals in such products will interfere with the body’s endocrine system.(石油製品の化学物質が内分泌の働きを妨げる)Since the endocrine system is responsible for regulating metabolism, growth, and tissue function, this can result in infertility, obesity, depression, and a host of other health problems.(新陳代謝や細胞の機能などを調整する内分泌が妨げられると不妊、肥満、うつなどになりうる)を、Being exposed to such chemicals has a negative effect on the body’s ability to control important physical processesで、「類語言い換え(interfere with~have a negative effect on ~regulate control)」と「サマリー・一般化」した4番が正解です。「一般化」とは、metabolism, growth, and tissue functionのような具体例をimportant physical processesのような概念に言い換えることで、準1級の読解問題ではこのパターンが非常に多く全内容一致問題の5割以上を占めます。もしこれがわからない場合は消去法に頼るわけですが、23の選択肢は論外として、うっかりトラップの1を選んでしまった人が多いようです。これはまず、今までの段落で気づかないうちにそういうものを使っていたことが読み取れるので、people’s acceptance(同意してあるいは進んで受け入れる)が間違っています。それから、そのこととled to以下との因果関係が無いのでダブルで間違っています。これは難問に多い「論点すり替え型」の誤答で、読解問題全体の約20%を占めます。

 

さて皆さん、いかがでしたか。このように読解問題にはワナが張り巡らされています。ですから問題のパターンを知り、トラップにはまらず、正答を選べるようにトレーニングしておきましょう。

 

それでは今度は、レターライティング問題を見てみましょう。

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