前回は、日本語教師という仕事の面白さについて書きましたが、今回は、「それでは、どうしたらプロの日本語教師として仕事ができるようになるのか」という、この仕事に興味を抱かれた皆さんが当然お持ちになる疑問に対する答えを出したいと思います。Q&Aの形で書き進めていきましょう。


1. 大学(短期大学を除く)において日本語教育に関する主専攻(日本語教育科目45単位以上)を修了し、卒業した者
2. 大学(短期大学を除く)において日本語教育に関する科目を26単位以上修得し、卒業した者
3. 日本語教育能力検定試験に合格した者
4. 次のいずれかに該当する者で日本語教育に関し、専門的な知識、能力などを有する者
  (1) 学士の称号を有する者
  〈以下省略〉
「日本語教育施設の運営に関する基準について」(1988年12月 文部省)より

さらに、日本語教育振興協会(通常は「日振協」と呼ばれています)が定めている「教員の資格」にも上記の条件が挙げられていますが、以下の文章が付け加えられています。

4.の「日本語教育に関し、専門的な知識、能力などを有する者」とは、学士の称号を有する者および高等学校において教諭の経験がある者については、学校、専修学校、各種学校などにおける日本語に関する教育もしくは研究に関する業務に1年以上従事した者または420時間以上日本語教育に関する研修を受講した者とする。

上記の基準の2.は、大学で日本語教育を副専攻として学んだ場合です。また、「420時間以上日本語教育に関する研修を受講した者」というのは、日本語教師養成講座で420時間以上のコースを修了した人のことです。この、420時間、というのは大学で日本語教育を副専攻として学んだ場合の時間数とほぼ同じです。国内の日本語学校だけでなく、海外の学校の求人情報に書かれている「有資格者」も、上記の基準を満たしている者、という意味です。

大学または大学院で日本語教育を専攻しなかった人がプロの日本語教師としての資格を得るには、日本語教育能力検定試験(長いので、たいていの日本語教育関係者は「検定」と呼びますが、たまに「能検」と呼ぶ人もいます)に合格するか、日本語教師養成講座で420時間のコースを修了するかのどちらかの道を選ぶことになります。


日本語教育に関する知識が全くない人でも、420時間のコースを受講すれば一通りのことが学べます。しかし、420時間コースを修了するのは、社会人にとってはかなり大変なことなのです。その理由は以下のとおりです。

@ 授業料がかなり高い。安いところでも30万円台だが、評判がいい講座の場合、50万円台の所もある。
A 全日制の講座、つまり平日は毎日授業がある講座でも、修了するのに約半年かかる。会社などに勤めながら通える講座もあるが、その場合、最低1年はかかる。
B ただ授業を聴いていればいいというわけにはいかず、実習の準備やレポートなどの課題をこなし、さらに何度か試験を受けなければ修了証書はもらえない。

というわけで、高い授業料を払っていながら、厳しさに耐えられずに途中でやめてしまう人もいます。しかも、国内の日本語学校のほとんどは「検定合格者」を採用の条件にしているため、よほど運がよくなければ、420時間のコースを修了しただけでは仕事をゲットすることはできません。海外でも、中国や台湾では、「検定合格者」または「検定合格者が望ましい」という条件を出している所が大部分です。つまり、420時間のコースを修了していても、検定に合格していなければ仕事が得られるチャンスが激減してしまう、ということです。


試験は平成14年度までは毎年1月に行われていたのですが、去年から毎年10月に行われることになりました。また、前述した「日本語教員養成において必要とされる教育内容」を踏まえて、出題範囲も去年から変わり、従来よりも広くなりました。その結果、去年の10月に行われた、新基準に基づく最初の検定試験の「試験T」では、「日本語」に直接関係のある問題が、従来の試験に比べると激減しています。