「はじめまして。木南です。どうぞよろしく。」
 日本語学校の新学期に、初対面の学生たちにする挨拶です。国内の日本語学校では授業は直接法で行われるため、初級のクラスではこれ以上の自己紹介はできず、「はじめまして」などの挨拶と「(〜は)〜です」という文型の導入をしますが、今回は、この文章の筆者は何者か、ということを読者の皆さんに知っていただくため、もう少し長い自己紹介をしたいと思います。

 私のフルネームは木南法子(きなみのりこ)で、現職の日本語教師です。
初めて日本語教育に関わったのは1995年10月から9ヶ月間、ニュージーランドのロトルアという都市で、主にintermediate schoolとhigh schoolで教えたときですが、当時はまだ日本語教師になるための勉強はほとんどしていなかったため、ボランティアのassistant teacherとして日本語と日本文化を教えていました。

そのときに日本語教師という仕事の面白さを知った私は、プロの日本語教師になることを目指して、帰国後の1996年10月から、東京にある日本語教師養成講座で6ヶ月近く勉強しました。養成講座受講中に、当時は毎年1月に実施されていた「日本語教育能力検定試験」にも合格し、その直後の1997年4月から東京の日本語学校に非常勤講師として勤務していました。

しかし、その年の12月に父が脳梗塞で倒れたため東京を離れ、1998年4月からずっと、新大阪にある日本語学校で非常勤講師として、中国をはじめとする様々な国から来た学生たちに日本語を教えています。指折り数えてみると、今年は日本語教育に関わり始めてから9年目、ということになります。

先ほど、「ニュージーランドで日本語教師という仕事の面白さを知った」と書きましたが、それから何年も経った今でも、この仕事は日本人の中学生や高校生に英語を教えるよりもずっと面白い、と思っています。実は、私は大学生のときに家庭教師として中学生と高校生に英語を教えたことがあり、さらにニュージーランドへ行く前にも、小学校6年生と中学生の女の子に英語を教えましたが、その仕事はそんなに面白いとは思えませんでした。その理由は後で述べることにします。

今回は、どうして私がこれまで日本語教育に約8年も関わり、これからも関わりつづけようと思っているのか、ということを書きたいと思います。一言で言うと、前述したように、「日本語教師という仕事は面白いから」ということになりますが、どういう点が面白いのか、を箇条書きでまとめると以下のようになります。

@ 「外国語としての日本語」という、普通の日本人が全然知らない分野について学ぶことができる。
A 日本語を日常的に教えているため、普段自分が使う日本語や自分の周囲で使われている日本語にかなり注意を払うようになり、そのことは自分自身の日本語力の向上につながる。
B 日本事情について、一般の日本人よりも深い知識を身につけることができ、しかもそれを外国人に伝える機会が得られる。
C いろいろな国籍の人々と毎日のように会えるので、彼らの国についての知識が得られ、彼らの持つ習慣、ものの見方、考え方を知ることができる。
D non-Japaneseは皆、日本人よりも率直に自分の意見を述べたり、積極的に質問したりするため、教師が教えたことに対する反応がわかりやすく、やりがいが感じられる。

それでは、上記の5点について詳しく説明していくことにしましょう。