評価法

日本語教育能力検定試験の出題範囲には「言語と教育」という区分があり、その中には「評価法」というのが含まれています。「評価法」と聞くと、「難しそう」と思われる方が大部分だと思いますが、「評価法」の知識は教育に携わる人々にとっては必要不可欠の知識なのです。今回は最初に、「なぜ評価法が必要なのか」をご説明します。

まず、「評価とはどういうものなのか」というテーマについて考えてみましょう。確かに「評価」という言葉を使うと難しく聞こえますが、実は私たちは自分でも気づかないうちに、評価を何度もしてきているのです。

例えば皆さんがめでたくプロの日本語教師になって、どこかの日本語学校の面接試験を受けに行ったとします。その日本語学校の事務室の前を通りかかると、事務員が一人の学生と話しています。事務員は中国語で何か言っていますが、態度が横柄に感じられ、しかもその語気から察すると、どうやら怒っているようです。ここで皆さんが、「この学校は学生に対する態度がよくないから、悪い学校だ」と思ったとしたら、既にその日本語学校に対して評価を下していることになります。

その評価は果たして正しいのでしょうか。事務員が怒っているように感じられた、というのは単に中国語の四声を強調して発音していたためにそう聞こえただけかもしれませんし、態度が横柄に感じられた、というのも中国人の事務員は相手の学生とはすっかり顔なじみになっているので、丁寧な態度をとるとよそよそしく他人行儀な感じがして良くない、と思ったのかもしれません。もしそうだとしたら、その日本語学校は必ずしも学生に対する態度が悪いとは言えませんから、上記の評価は間違っている可能性が高くなります。

このように、私たちはいつも何らかの評価を下していますが、その評価は誤っていることも多いのです。上記の例からおわかりだと思いますが、正しい評価をするのは実は非常に難しいことなので、それができるようになるためには評価法を学ぶ必要があります。特に教育者は学生を正しく評価することが求められますから、曖昧な評価をしてしまわないように、評価の基準をきちんと決める方法などを知っておくことが大切です。

評価法を学ぶことの必要性が、少しでもわかっていただけましたか。日本語教育の世界では、最近、「評価法」の重要さが認識されるようになってきたようです。

実は「評価法」は一昨年までの出題範囲にも含まれていたのですが、何年か前まではこの分野からの出題はほとんどなく、私が受験した平成8年度の試験にも評価法に関連する問題はありませんでした。ところが、平成13年度あたりから評価法関連の問題が少しずつ増え始め、去年は「試験T」、「試験U」、「試験V」で、つまり全ての試験で、評価法に関する知識がなければ解けない問題が出題されました。

この傾向はこれからもずっと続くと考えられますので、次回の検定試験を受験する予定の方は、単に評価法の専門用語を覚えるだけでなく、評価の仕方についてもきちんと理解しておく必要があります。もちろん、知識がいくらあっても、教育現場で実際にそれを活用できなければ意味がありませんから、教師になってからのことも考えながら勉強した方がいいと思います。

今回は、前回の検定試験の「試験V」に出題された評価法関連の問題を見てみましょう。この問題の後半の問6〜問8は、日本語教育の現場を意識して作成された問題です。

問題8 
次の資料(A)は、初級コース後半に行われた文法の小テストの一部であり、次のページの資料(B)はこのテストの結果をまとめたものである。資料(A)の問1の部分は、学習した新出文法項目の内容を中心に作成してある。これらの資料とそれに続く文章をもとに、後のページの問い(問1〜8)に答えよ。

資料(A)