通訳ガイド国家試験の英文読解問題は、客観問題になっているのものが、多義語の知識を試すものが非常に多く、合格を確実なものにするには、この「多義語」を克服しなければなりません。そして、この客観問題が解けなければ文章の全体像がつかめないためにその他の問題も間違ってしまうことが多々あります。この多義語の知識は、平均的英語学習者の盲点となっているもので、その知識がなければ洋書や洋画を楽しむのに大変苦労したり、「単語はわかるのにうまく訳せない。今一つ、意味がよくわからない」と嘆く点なのです。そこで今回はそういったきわめて重要な多義語の問題を含んだ典型的な通訳ガイド試験の読解問題(2002年度)を取り上げてみたいと思います。

It is amazing, the wonders that cruelty and despotism can sometimes produce. If few of the millions of tourists gaping at the majesty of the Pyramids every year ( A ) a thought for the millions of slaves who died constructing them, the Moscow Metro, too, is an example of a form of victory ( B ) adversity. Inaugurated at the height of Stalin's dictatorship in the 1930s, (ア) the Moscow subway saw armies of purge victims and labor camp inmates deployed alongside thousands of building workers to create what was trumpeted as the world's finest subway system. ( C ) died tunneling deep under Moscow. They are pretty much forgotten now, but their work is the pride and glory of Moscow and Russia, probably the world's most bizarrely beautiful, most efficient, busiest and cheapest subway system.
  The first tunneling started in 1932, and three years later the trains started running. They haven't stopped since ― every 90 seconds or two minutes during rush hour, every five minutes the rest of the time, from 6 a.m. till 1 a.m. (イ) There may be a crush, but there is seldom a wait. And the trains take you through a parade of marbled and spacious stations, which contrast totally with the grubby streets and crumbling buildings above ground. The 162 stations straddling 11 lines mean that most of the city of 11 million is covered by the metro and it will cost you five rubles to go anywhere. For tourists, it's a major sightseeing ( D ) . Some stations in the city center, for example, ( E ) mosaics, marble and brass chandeliers. Other stations saw the use of three dozen types of marble, lavish statuary, malachite and onyx.

(1) 空欄A, D, E, に入る最も適切な単語を以下の選択肢群から選びなさい。ただし同じものを二度選ぶことはできない。

(A)   (D)   (E)  
選択肢群: blink / draw / erase / feature / peep / spare / talk / void

 どうですか? 選択肢群の中の単語は簡単なのに、普段から英英辞書を引いて、いろいろな意味がある単語だと言うことをわかっていないと正解が導き出せないような英語への造詣の深さを試すいい問題になっています。では実際に解いてみましょう。皆さんももちろん、自分で考えてから解説を読むようにしてください。まずは空所補充の問題です。解答は次のとおり。

(A) spare

spareの動詞用方は大きく見ると「(何かに備えて)取って置く」「使う」です。そこからspare no effort 「努力を惜しまない」、spare no expense「金に糸目をつけない」、spare a thought for( an unfortunate person)「(その人たちのこと)親身になって思いをめぐらせる」などの意味が生まれてきます。

(D) draw 
この文脈では名詞(呼び物)で使われており、他に名詞の意味では「引き分け、抽選、タバコの一服」などがあります。また動詞の意味では、皆さんもよくご存知のように「描く」「(人の注意・関心を)引きつける」「(カーテンやブラインドを)引く」「(人やモノを)一定の方向へ動かす・移す」などがあり、そこからdrawの後に続く言葉によって、いろいろな意味が生まれてきます。「息(タバコ)を深く吸い込む」「(水などを)汲み上げる、引く」「(血を)流す」「(金を)引き出す・受け取る」などがあり問題になっているのは、映画や行事などが大勢の人を「引きつける」 という意味の名詞の用法です。

(E) feature
特徴などの意味でおなじみのfeatureですが、動詞の用法には「特徴づける」「展示する」などがあり、問題文でも「〜を呼び物[売り物・柱]にする」 の意味で使われています。その他の問題も見てみると

(2) 空欄Bに入る前置詞を書きなさい。[over](前置詞のコンセプトに関してはベレ出版の「発信型スーパー英文法」をご覧下さい。

(3) 下線部 (ア) を日本語にしなさい。モスクワの地下鉄では、大勢の粛清の犠牲者と強制労働収容所の収容者が、世界で最もすばらしい地下鉄網と謳われたものを建設するために、何千人もの建設労働者と共に動員された。(よくジャーナリズムで用いられる多義語”see”の用法で「経験する、目撃する」などの意味がある;”armies of ~”の多義性を表し「〜の大群」;日本語ではラッパと言われているやや多義語”trumpet”の動詞のこの文脈での意味は「吹聴する、自慢する」)

(4) 空欄 C に入る最も適切な語を下からひとつ選び、丸(○)で囲みなさい。

1.Screws  2.Scores  3. Scraps  4. Scorches  5. Schools  
[Scores:多義語”score”の名詞用法の1つで「多数の」を意味する]

(5)下線部(イ)を日本語にしなさい。[混雑することはあるかもしれない:これこそまさに多義語”crush”の「混雑」の用法]