問4 文章中の下線部Aのような相互行為において、学習主体の現在の発達水準と、支援者の働きかけにより達成できる水準との間の部分をヴィゴツキーは何と呼んでいるか。最も適当なものを、次の1〜4の中から一つ選べ。
1 i +1 2 共通深層部
3 習得の臨界期 4 発達の最近接領域
問5 相互行為の中で学習を支援する行為は何と呼ばれているか。最も適当なものを、次の1〜4の中から一つ選べ。
1 インプット 3 アセスメント
3 シミュレーション 4 スキャホールディング
問6 近年、ヴィゴツキー理論との関連性が論じられるものがいくつかある。関連性が最も低いものを、次の1〜4の中から一つ選べ。
1 言語相対論 2 状況的学習論
3 社会文化的アプローチ 4 タペストリーアプローチ
上記の 問5だけは消去法でも解ける問題だと思いますが、残りの5問はおそらく知識がなければ解けないと思われます。ヴィゴツキーの理論に関する問題はこのところ度々出題されているようで、次回以降も出題される可能性がありますので、この理論はきちんと理解しておく必要があります。ここでは、問題の解説を通して概要を説明します。
問1の問題は、言語教育を少しでも勉強したことのある方なら、問題文中の「刺激・反応」というキーワードを見ただけで、答えは3の「行動主義」だとすぐにわかるでしょう。つまり、おそらくほとんどの人が正解できると思われるこのような問題は基本的な問題だといえるので、これを落としてしまうようだったら、検定試験合格までの道のりは長くなりそうだ、ということになります
行動主義心理学では、刺激と反応の繰り返しによる行動の変化が「学習」だと考えています。この理論は、問題文中にもある「「ドリル方式」や「文法積み上げ式」を特徴とするオーディオ・リンガル・アプローチという教授法を生み出しました。
オーディオ・リンガル・アプローチで教師が学生に与えるキューは一種の「刺激」であり、それに答える学習者の発話は「反応」に相当します(この練習方法の具体例は問2の解説で説明します)。こうして刺激を繰り返すうちに、特定の言語形式が自動的に言えるようになり、「学習」が起こると考えるのがこの教授法です。
行動主義心理学の研究者たちは人間の言語習得も上記の「刺激と反応」のプロセスで実現されると考えていましたが、チョムスキーが指摘したように、子どもの言語習得の仕組みは行動主義心理学では説明できませんでした。子どもは刺激に関係なく、いつの間にか言語を習得するからです。
こうして行動主義心理学に変わって登場したのが認知心理学です。認知心理学というのは、人間の意識や心、すなわち認知を対象とする心理学のことですが、この分野の研究者たちは、新たな知識と過去の知識との間につながりが生まれたり、過去に得た知識から連想して新しい問題を解決できるようになったりすることが「学習」だと主張しています。
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