それでは、問1から順に解説していきたいと思います。


問1の問題を解くためには、評価法についての基本的な知識が必要です。表の下の問題文の最初の行に「このテストは教育内容や方法の見直しを図る目的で行われたもの」と書いてありますが、そのような評価は「形成的評価(formative evaluation)」と呼ばれます。したがって、正解は2です。

狭い意味での「評価」は、学習者の能力の測定ですが、これはそれを行う目的や時期によって次の3種類に分類されています。

@ 診断的評価(diagnostic evaluation):学習者の現在の能力を分析して、それに合った授業内容や教え方を選ぶための評価。教育開始前に行われるプレースメント・テスト(placement test)や学期初めに行われる学力テストなど。
A 形成的評価(formative evaluation):教育を始めてから学習者の習得の状況を測定し、教育活動や教育内容の適不適を判定するために行われる評価。アチーブメント・テスト(achievement test)や予告なしに行われる小テスト(pop test)など。
B 総括的評価(summative evaluation):学期末、学年末、卒業時などに教育目的の達成度合いを測定するために行われる評価。期末試験や学年末試験など。

また、評価は、評価のための資料(テストの結果、日頃の教室活動の様子など)をどう評価に反映させるかによって、次の2種類にも分類できます。この2つは皆さんもよくご存知だと思います。

@ 相対評価ある集団の中で、ある個人がどのレベルにいるかを明らかにする方法。学校教育での5段階評価など。
A 絶対評価:一定の基準を設けて、学習者個人がその基準に対してどの位置にいるのかを明らかにして評価する方法。例えば、試験の成績のいい者が多い場合には、何十%でも際限なくAランクを与えることができる。


問2は、評価法に関する特別な知識がなくても、常識があれば解ける問題でしょう。多肢選択式(多肢選択法:二つ以上の選択肢から正答を選ぶ試験形式)の試験が、客観テストまたは客観試験と呼ばれることは、皆さんもよくご存知だと思います。正解は当然2です。
試験は採点の方法から客観テスト主観テストに分類できます。客観テスト各問題とも正答が一つで、正答表さえあれば誰でもが、マークシート方式の場合コンピューターでも採点できる試験です。他方、主観テストは、作文や論述テストのように採点が主観的に行われる試験です。

ちなみに選択肢3の適性テスト、または適性試験(aptitude test)というのは、言語学習の適性を調べる試験、つまり、学習者が生まれつき持っている「能力」、「センス」を調べて、難しい言語を学習する能力があるかどうかを判定するための試験です。米国で行われているMLAT(Modern Language Aptitude Test:去年の試験Tの問題6問3で出題されています)などが有名ですが、日本語教育ではまだ本格的なものは開発されていません。

問3は専門用語を知らなければ勘で解くしかないと思います。問題文には、「作文や会話に比べて採点が容易であるという点においてテストの(3)は高い。」と書かれていますが、「採点が容易である」、つまり、採点に時間がかからないことをテストの「経済性」が高いと言います。「経済性」というのは、テストを実施する際に、時間や費用などの面で経済的であるかどうかということです

選択肢1の「信頼性」というのは、テストが測定の道具として一貫性、安定性を持っているかということで、「信頼性が高い」ということは、同じ測定対象を同じ条件下で測定した場合、何回測っても誰が測ってもいつも同じ結果が得られるということを意味しています。
選択肢2の「妥当性」は、測定しようとしている学習項目を正確に測れているかどうか、ということです。例えば、テストの範囲を逸脱していたり、偏って出題されていたり、聴解の問題にもかかわらず、漢字が難しくて問題が読めなかったりすれば、そのテストは妥当性を欠いていると言うことになります。

問6は、知識がなくても分析力が少しあれば解ける問題ですので、あせらずに落ち着いて表(B−1)をよく見て、質問の文をよく読むことが大切です。質問の文には「不適当なもの」と書いてありますので、要注意です。

まず、選択肢1を読んで迷う人もいるかもしれませんが、同じテストを他のクラスでも実施していた場合は、表(B−1)を見ると、どの問題に何人の学生が正解したか、と各学生の得点がわかりますので、「クラスによる習得状況を比較する」ことができます。また、この表から、どの学生がどの問題で間違えたかがわかりますので、選択肢2の、「学習者一人一人の学習課題を見つけ出す」こともできます。選択肢3の、「各問題が適切なレベルかどうかを検討する」ことも、どの問題に何人の学生が正解したか、がわかれば可能です。

正解は選択肢4の、「学習者のモティベーションの推移を調べる」ですが、この表を見ても学習者のモティベーションが高いかどうかはわかりませんので、当然この表を利用してモティベーションの推移を調べることもできない、ということになります。