上田ビル3F
この度、『世界の歴史の知識と英語を身につける』が韓国で翻訳され出版されることになりました。
それに先駆け、朝鮮日報社(朝鮮日報は韓国の全国紙で3大新聞社の1つです)より植田学長に紙面インタヴューがありました。
日本英語学習者にも向けてそのQ&Aをお送りいたします。
「英語と世界史を同時に学ぶ」韓国語版発刊をお祝い申し上げます。忙しい日程にもかかわらず電子メールインタビューに応じてくださり、ありがとうございます。朝鮮日報「おいしい勉強」は幼・小・中・高等学生と父兄に多様な教育情報と教育コンテンツを提供する教育専門セクション誌です。毎週月曜日、朝鮮日報(韓国の全国紙で3大新聞社の1つです)とともに発行されます。
質問 1
英語と世界史はあまり連関性がないように感じられます。このふたつを一つに結ぶ本を発刊されたきっかけを知りたいです。特に序文で「最後まで越えられない壁」として地球村に対する幅広い理解について語られました。世界史の知識が英語の学習にどのように役立つのか気になります。
回答
英語を習得上で、タイムやエコノミストが読んでわかることは重要なのですが、国際問題や歴史の背景がわからないと、こういった記事の真の理解は不可能です。ゆえに、世界史は英語の勉強と密接に関係しているのです。また、TOEFLやGREなど留学に必要な英語検定試験においては、世界史に関連した文章も多く出題されますが、その内容を知っていれば非常に有利になります。世界史はこういった試験の文系分野では頻出の分野なのです。ちなみに、日本の大学入試では、英語のスコアを上げるためには、世界史を選択し、勉強することを勧めることが多いですが、これも英語と世界史の勉強の相乗効果を狙ったものです。
質問 2
本の内容を見ると、主要イシューと事件を中心に世界史に関係させながら主要用語を英語で併記したのが目につきます。母国語の本で世界史を勉強して、主要英語単語を別に暗記することと「英語と世界史を同時に学ぶ」を勉強することはどんな点で差があるのですか?
回答
単語は、単語帳からではなく、文脈(できればストーリー)の中で覚えるほうが、効果的です。個別に単語帳などで覚えるのは、総復習としては、よいのですが、native speakerが語彙を習得したアプローチと違い、一般的には不自然なものです。よって、世界史の文脈の中で語彙を覚えていくのは効果的です。
質問 3
英語は西洋の言語ですが、西洋史だけではなく中国・韓国・日本・東南アジアなどのアジア圏の歴史も一緒に扱っています。その理由は何でしょうか?
回答
今や英語は”globish”の時代で、native speaker、つまり欧米のものだけでなく、全世界、特に「アジア人の英語」も重要です。そこで西洋史だけでなく、アジアの歴史も知った上で、世界的視野に基づいて英語学習を進めていくことが、今の時代には必要です。
質問 4
どのくらい英語の実力を持った読者に相応しい本ですか。また、どのようにしたら最も効果的にこの本を活用することができますか?(本文及び付録)
回答
TOEIC500点くらいの方でも、充分エンジョイできる内容になっています。また本書の効果的な使用法としては、巻末付録の固有名詞は、CDを何度も聞いて、音を聞いて認識できるようにしておくと、BBCやCNNなど英語ニュースを聞いたときに楽にキャッチアップできると思います。また歴史の説明を読みながら、固有名詞を中心にノートをとってみてください。文脈の中で覚えれば、比較的に楽にインプットできると思います。これはTOEFL対策などにもつながると思います。
質問 5
「英語の達人」になるために英語の辞書を丸ごと覚え、数百編の映画のセリフを書き取られたと聞きました。達人になるまで段階別にどのような困難があって、どのように乗り越えられたのか教えてください。(詳しくお願いします。)
回答
私の場合は、基本的に英語の勉強は24才の時に、時事英語から入りました。国内ニュースは数カ月で理解できるようになりましたが、CNNなど国際ニュースをエンジョイできるようになるまでにはその10倍かかりました。これは、国際問題や歴史などの背景知識の乏しさと、CNNなどで使用される語彙のレベルの高さにありました。それを乗り越えるために、行ったことは、タイムなどを読んで読解力をつけるのと同時に、CNNを聴いて、リスニング力をつけるという同時進行で、それによってそれぞれを補い合い、リーディング力UPとリスニング力UPの相乗効果を得ることができたのです。
ライティング力は、日本では資格検定試験対策勉強や「百科辞典の音読」やネイティブスピーカーとの文通などを通じて伸ばし、その15年後の英語圏での留学3年間は、締め切りに追われながら、論文を大量に書くことで伸ばしてきました。
スピーキング力は、日本では、ニュースやドラマなどをシャドウイングしたり、洋画や口語辞典などで覚えた表現を、ネイティブスピーカーとの交流の中で使いつつ、自分のものにして行ったり、また自分の英語学校をオープンしてからはクラスを英語で教えながら伸ばし、その15年後の英語圏での留学3年間では、ネイティブの大学生を教える仕事をするなどして磨きをかけてきました。スピーキングでは、Written Englishで使われるようなフォーマルな表現とspoken[口語表現]の双方の習得が必要ですが、両者のバランスをとりながら、勉強をすすめていくことが大切です。私の場合は、フォーマルな表現は、先ほど述べました「百科事典音読」と、「論文執筆」で、また口語表現は、「洋画との格闘」のなかで培ってきました。ちなみに、ドラマは2年で楽にわかるようになりましたが、洋画をエンジョイするにはその10倍の20年が必要でした。英語力だけでなく文化的知識なども必要とされる洋画との格闘は、本当に根気のいるものです。
質問 6
アジア圏の学生たちが英語を勉強する時、最も難しいのが発音と会話です。アジア圏の学生の英語学習の問題点は何で、どのような解決策を持っていらっしゃいますか。また、この本がリーディング、ライティングだけでなく、リスニングとスピーキングにも役に立つとおっしゃいましたが、どのような部分で役立つのか紹介してください。
回答
確かに英語の発音を習得するのは大変ですが、全体を通して意味を伝えるためには、それ以上に英語のリズム・ストレスを「体得」することが重要です。そのために最も効果的なのはやはり「シャドウイング」でしょう。大人になって英語の勉強を再開した場合は、最初の3年間ぐらいは、英語のニュースやダイアローグなどを1日に1時間ぐらいはシャドウイングして欲しいものです。また、ノンネイティブにとって固有名詞は間違って覚えている場合が多いので、この本のCDに収録されている固有名詞を正しく読めるようになったり、聞き取れるようになれば、国際ニュースをリスニングしたり、国際問題を話す際に役立つと思いますので、何度も聞いてリピートしてマスターして下さい。
質問 7
ネーティブスピーカーでなくても、誰でも英語の達人になることができるとお考えですか? 「英語の達人」になるために一番重要なことは何だと思いますか?
回答
「誰でも次の4点を実現できれば英語の達人になれると思います。」
まず第1点は、「師(mentor)、手本となる人(role model)を持つこと」です。これによってその人から感化を受け、その人を目指して頑張るので成長することができます。私の場合は松本道弘という英語の達人打倒を目指したおかげで目覚しく成長することができました。
第2点は、「大志(aspiration)とpositive thinking(信念)の一体」です。イチロウの名言集の中で、「ピンチは最大のチャンス到来である。それを乗り越えれば一気にレベルが3倍以上UPする。」、「スランプは自己反省を促し、次の躍進へのステップである。」とありましたが、これは私のモットーである、”Let’s enjoy the process!(陽は必ず昇る!)と同じコンセプトです。大志を抱いても挫折しがちな人生を生き抜くには、己のポテンシャルを信じて苦境を乗り越えるプロセスを「エンジョイ」して行くという「真のポジティブシンキング」だと思います。目に見える成果もなくスランプのように思えても、それを自己反省と精神力UPのチャンスと捉えて、次なる飛躍に備える姿勢こそ「英語の達人」になるのに不可欠な要素だと思います。
第3点は、「英語一色の環境作り」です。私の場合は、日本にいながら、自分の日本語のレベルまで英語力をUPするためにはどうすればいいかを考えた結果、英語の健康、投資、ワイン、日曜大工、旅行を含む様々な分野のハウツーもののビデオを繰り返し見て語彙表現を覚えたり、英語で義務教育レベルの社会、理科、国語などの教養を身につけるために、全学問分野をカバーした、リーダーズダイジェスト社の簡易百科事典(1500語×約2000ページ)を何度も音読してマスターしたり、口語表現を身につけるために、洋画やドラマをディクテーションしたり、自分の趣味の分野も英語でインプットしたり、寝る前も起きるときも歩く時も英語の放送が聞こえるようにして「英語一色の環境作り」をしました。英語圏の高校、大学、大学院を卒業して10年以上英語圏で生活した人に相当する英語力を身につけるには、「英語一色の環境作り」も重要なファクターだと思います。
第4点は、「論理的思考(logical thinking)」です。人を説得するための要素に、ethos(常識や伝統や権威)、pathos(哀れみなどの感情的インパクト), logos(論理的思考)の3つがありますが、英語の達人になるには最後のlogosを鍛える必要があります。既存の価値観や権威を歴史的、世界的見地(historical and global perspective)から検証して行くゆるぎない信念(principle)が必要です。このprincipleには「大宇宙の原理」という意味があり、これに基づいてlogical and critical analysisする姿勢する姿勢こそ、優れた英語の「発信力」につながるものです。
この4点をすべて揃えることは一見難しいように見えますが、本当に素晴らしい師に出会えば、同時にすべてに巡り会うことができるでしょう。そういった偉大なる師に出会えるように祈っています。”Let’s enjoy the process!(陽は必ず昇る!)”
質問 8
世界史の他にも様々な方式の英語学習法があると思います。現在、準備していらっしゃる本や計画中の本がおありですか?
回答
語学の「基礎研究」に相当するのは、1. 語彙研究 2. 文法研究 3. 音声学研究 4. アーギュメント研究 5. 背景知識研究で、「応用」に相当するのは、1. 翻訳とその研究である翻訳学、2. 通訳(ガイド)とその研究である通訳学、3. 様々な英語のプロになるための資格試験とその研究、そしてそれらを含めて指導する、4.ティーチングとのその方法論の研究です。私は今後もそれらすべてを研究し、その成果を出版していく予定です。
まずボキャブラリー研究では、まず「最重要類語グループ100の使い分け」を、中高校レベルの語彙(e.g.「得る:get, take, gain, obtain, acquire, secure, win, earn, pick up, come by, procure」)ほとんど英語学習者・教師はできない)から英検1級レベル以上の語彙に渡ってできるようになるための本を出版する予定です。これは将来、マルチリンガルで電子辞書化するのが理想です。
英文法研究では、グーグル、コーパスなどを用いてコリンズコビルドの英文法書3巻を始めとする文法書を検証し、時代遅れの文法書の内容を改定し、言いかえ表現のニュアンスを記した「スーパー英文法の第2弾」を出版します。
音声学研究では、バイリンガルブック「世界の地理と英語を身につける」の中で、アジア、ヨーロッパ、アフリカを含む様々な国のノンネイティブの英語を、音声面と文化発想面から解説し、聞き取りのコツを紹介するつもりです。
アーギュメント研究では、「英語を論理的に話す技術とトレーニングの第2弾」を出版し、最重要トピック100のpros & consとその反論方法と語彙表現などを示していきます。
背景知識では、「これ1冊で日本の事が何でも英語で言える」のシリーズとして、「サイエンス」、「政治経済」などを出版して行きたいと思っています。
翻訳学研究では、「翻訳の極意(The Essence of Translation)」の洋書を出版し、大学向け図書で「洋画を用いた英語学習テキスト」や「究極の映画活用英語勉強法」を出版していきたいと思っています。
通訳ガイド研究では、日本文化シリーズ第2弾「日本の事を英語で何でも言えるための表現グループ100」、第3弾「外国人が日本について最もよく聞く質問トップ100の攻略法」を出版し、将来は日本事象のマルチリンガル辞典を製作したいと思っています。
資格対策本では、「英検1級・準1級スピード合格」、「iBT TOEFLホップステップジャンプ」、「TOEICこれ一冊で満点英文法」、「TOEICこれ1冊で満点リスニング」、「TOEICこれ1冊で満点リーディング」などの出版を予定しています。
ティーチングとその方法論の研究は、高校の授業を英語でする文科省の意向に沿って、インストラクターが、高校・一般の英語学習者に英語で授業を行えるように、「英語で授業を行うテクニック」を製作したいと思っています。
質問 9
この本を読む韓国読者たちに、また英語を勉強する非英語圏の読者たちに望むことがあればお聞かせください。
回答
大半の英語学習者の間では、TOEICスコアUPなど英語の資格検定対策勉強が重要な位置を占めているように思えますが、あまりそういった「英語の基礎力・受信力」や「事務能力・集中力」を測る試験の対策勉強ばかりに走らずに、英語の造詣を深めたり、発信力をUPさせる努力をして欲しいものです。私の生徒にはTOEICのスコアが980点以上の高得点者たくさんいますが、そういった検定試験で測れる英語の能力はごく1部で、実際に英語で仕事をして行く上では不十分なものです。自分の能力を証明するために、いわゆる「TOEICお宅」になったり、TOEICのスコアが満点であることを自慢するのは、真の英語のマスターの見地から見れば、本末転倒です。素晴らしい書物や師に巡り会って自己啓発し、英語の達人への道を歩んで欲しいものです。
植田 一三(Ichay Ueda)
年齢・性別・国籍を超える英悟の超人(ATEP [Amortal “Transagenderace” Educational Philosophartist]), 最高峰資格8冠突破&ライター養成校「アスパイア」学長。
自己実現と社会貢献を目指す「英悟道」精神,“Let’s enjoy the process!(陽は必ず昇る)”を教育理念に,指導歴40年で英検1級合格者を約2,700名以上輩出。出版歴35年で著書は120冊を超え,多くはアジア5か国で翻訳。
ノースウェスタン大学院・テキサス大学博士課程留学,同大学で異文化間コミュニケーションを指導。
教育哲学者(educational philosopher),世界情勢アナリスト,比較言語哲学者(comparative linguistic philosopher),社会起業家(social entrepreneur)。