「日英発想の違い」を認識してライティング力数段UP!

日本語と英語の間には、言葉が成り立ち醸成されてきた歴史や文化の違いから、当然言語コミュニケーションにおいて違いがあります。そのため日本人が、外国語を用いてコミュニケートしようとすれば、日本語的発想(a Japanese frame of reference, a Japanese “languaculture”)から、当然「母国語の干渉(interlingual transfer error)」が起きます。

しかしここで重要な事は、普通のノンネイティブが一生かかってもマスターできないネイティブスピーカーの発想に基づく英語をやみくもに覚えたり話そうとすることではなく、それが世界の人々とコミュニケーションとする時に”work”するかどうかを考えるということです。つまり”borderless English”というものと世界のさまざまな文化に基づく英語の両方の見地から英語と言うものを検討する必要があります。

まず、日本語の発想に基づく英語と言えば次のようなものです。新幹線に乗ってトイレに入ると「便器に物を捨てないで下さい。」という注意書きがありましたが、その直訳、“Don’t throw things in the toilet.”がその1例で、それを読んでわかるのは日本人だけで、それは日本人の持つ発想(shared cultural assumptions)から行間を読んで理解しているからです。また、よくセールスパーソンが「絶対損はさせません:You won’t regret this!(英語の発想)」とか言ったり、やくざ映画などで「覚えてやがれ!:You will be really sorry (for this)!」と捨て台詞(parting shot)を残したり、パフォーマンスか何かする時に「見てろよ!: You will respect me!」と言ったりしますがこれもそうです。

1番最初の例の場合は、これを英訳しているのを見ると、”Please dispose of non-paper objects in the receptacle provided.”、”Please flush anything other than toilet paper down the toilet.”とあり、これを日本語に訳すと「紙以外のものは備え付けの容器に捨ててください。」となりますが、まさにこれは日本人以外のどんな国の人が読んでもわかるいわゆる”borderless Japanese”と言えます。ところが、次の3つの例は別に日本的な発想をそこまで英語の発想に変えなくてもいい例です。他にも様々な英語が考えられるこういった例はこの他にもたくさんあり、日本人の話す英語が通じにくいか誤解を招く理由の一つになっています。例えば日本人特有の「謙譲」の気持ちがそうです。よく儀式などのスピーチで「僭越ながら開会の辞を取らせていただきます。」と言うのを直訳して、”It is presumptuous of me to make an opening speech today.” とすると、100人のネイティブスピーカーに統計を取ると7割は変に思い、どうして”opening speech” をするのが”presumptuous(生意気)”なんだろう名誉なことでは無いのだろうかと思います。英語の発想では、”It is a great honor to make an opening speech today. (本日は開会の辞を取らせて頂きとても光栄です。)”となります。

しかし、このように、日本語独自の「謙譲の美徳」と言われる文化から生まれる話し方を、英語圏の発想に変えてしまうことは、”linguistic imperialism”でありフェアーでない、日本人が英語国民に合わせて英語を使っているのだから、せめて日本人の発想・文化ぐらいは理解しようと努力せよと主張される方は、そういったいわゆる「日本語英語」を話した後、聞き手がぽかんとしているかけげんそうな顔の表情を示した時は、即座に「これは日本文化を表す~だ。」のように相手がわかるように説明する必要があります。そこで、この章ではこういった日英の言語文化を比較分析しながらその違いを理解していただくと同時に、問題練習によって日本語の発想への洞察を深め、文法的見地を含めて日英両方の発想を英語で表現できるようにトレーニングしていただきましょう。

さて、この前者の日本人の発想に基づく英語を「タカ派の英語」、ネイティブスピーカーの発想に基づくを「ハト派の英語」と呼びましょう。このどちらがいいかという問題に関して、今までは英語に造詣の浅い日本人英語教師が無知のために「タカ派」の英語をOutputして教えてはばからなかったか、あるいはネイティブ信仰によって「ハト派」に徹し、ネイティブに不自然だとかそんな言い方はしないと言われると日本語発想の英語を除去しようとしようとするかの二極分化でした。しかしこれらはいずれも真の異文化間コミュニケーションとは言えず、どちらのアプローチを取るべきかは時と場合によります。

よく言われる「国際人」の英訳の1つとして、”a successful intercultural communicator”がありますが、異文化間コミュニケーターとして、日本文化や日本人の発想(“languaculture”)を外国人に伝えたいなら、「タカ派」もすばらしいことだと思います。たとえば、日本語の「うぶな」に相当する英語がなく苦労して考え出して”charmingly naïve”と言い、言葉のセンスのないネイティブにそんな英語聞いたことはないと言われ、そう言うのをやめたというのではあまりにも気が弱すぎます。ここは前述の”borderless English”の3原則の1つである「クリエイティブ」かつ勇気を持って対処しましょう。ただしその場合は、いわゆる日本語的英語をわかりやすく説明する必要があります。

しかし、このような日本語発想の英語といっても、先ほど述べた「謙譲の英語」で、その直訳がネイティブスピーカーに意味は通じるが、英語の発想( frame of reference)から判断して不自然であるとみなされるものと、新幹線のトイレの例や、”The game must be played in real earnest.(これは真剣勝負だ-”There is no second chance.”これが日本語のポイント)”や、「今やラジオ教育番組が聴ける:You can hear でvarious kinds of educational programs on the radio nowadays. →Various kinds of educational programs are available on the radio nowadays.(前者だと相手の耳がいいとなってしまう」などのように完全にミスコミュニケーションが起こったり通じなかったりするものがあります。英語を発信する異文化間コミュニケーターとしては、後者は避けなければなりませんが、前者のタイプは時と場合によって使い分けられなければなりません。

ところで、こういったinterlingual transfer errors( 母国語につられることから来る誤り)には、「発想の違いからくるもの」、「語彙の使い方に関するもの」、「文法上のもの」の3種類があって、それぞれ対策や攻略法が変わってきます。

まず語彙に関しては、日本語の語彙と英語の語彙への洞察の浅さから来るもの(特に後者)ですから、英文ライティングにおいては英英辞典で意味・用法・コロケーション(「適確な語彙の使い方」の章参照のこと)などをきちんとチェックして文脈に合う語彙選びをするようこころがけましょう。例えば「妥協する」にしても「両者が妥協する」と「その仕事で妥協する」では英語が変わってきて、前者は”compromise”ですが、後者は”settle for”と使い分けないとなりません。それから英和辞典を引く時注意してほしいのは英和辞典の定義は「妥協の日本語約」であって参考程度にするという事です。英単語とそれに相当する日本語とでは意味の広がり(semantic field) が異なる場合がほとんどで、例えばattitude, integrity, proud をそれぞれ「態度」「高潔」「誇って」と訳してみても、それらの単語の一面しか反映していません。 ”proud”は

feel pleased about something good that you possess or have done or about something good that a person close to you has done.

とあるように、自分が持っている物や自分、あるいは自分に近い者がしたことに対して「いいと思ってとっても満足している状態」です。よく親が子供をほめて、 “I’m so proud of you!”言いますが、それは「よくやって嬉しいわ!」に近いのです。interesting, learn, tactful, sincereも英和辞典の代表的な意味と英英辞典(ロングマン)の定義とを比較してみると次のようになります。

単語 英和辞典の意味 英英辞典の第一義の解説
Interesting 興味深い、面白い unsual or exciting in a way that keeps your attention or makes you think
Tactful 機転の利く、如才ない careful not to say or do anthing that will upset or embarrass other people
Sincere 誠実な、まじめな honest and says what they really feel or believe

まず”interesting”は日本語の「興味深い」よりも意味が強く、unusual(=different from ordinary)、つまりいい意味で「普通ではない」ので、日本語の「個性的」に近いことがわかります。次に”tactful”ですが、日本語の「機転が利く(=物事に応じて機敏に心が働くこと)」とは大分異なり、「人を不快にさせたり怒らせたりしないようにする」人のことなのです。また、「如才ない」の意味は、広辞苑によれば「抜け目がない、愛想がいい」で、これも”tactful”とずれがあります。英英辞典の定義からぴったりくる日本語は、「気配りができる」あたりではないでしょうか。ちなみに、「機転の利く」に近い英語にはresourceful(=good at finding ways of dealing with problems)があります。 次の”sincere”も、「うその無い、正直な、本当の、心からの」と言う意味を持つ語で、日本語の「誠実な(=他人や仕事に対してまじめで真心がこもっていること)」とはずれがあり、後者には”trustworthy, reliable, “の意味もあります。

“embarrass”の「当惑させる」も誤解の元です。英英辞典では、“make someone feel ashamed,nervous, or uncomfortable, especially in front of other people”で、正しく説明すれば「恥ずかしい思いをさせて不安な気持ちさせる」の意味です。

“learn”と「学ぶ」はどうでしょう。learnとは”gain(=get more and more of a useful or valuable quality, skill, etc.)knowledge of a subject or skill in an activity, by experience, by studying it, or by being taught”、つまり独学であってもいいし、経験から学んでもいいし、教わってもいいし、とにかく有益なスキルや特質を身につけていくことであるのに対して、「学ぶ」は同じく広辞苑によると「教えを受ける、習う」とあり、英語のlearnより意味が狭いことがわかります。

こういった「英語単語音痴」の打開策は何といっても「英英辞典」を活用でしょう。約1000時間英英辞典を使いこなせば、語感をかなり養うことができるようになります。最近は電子辞書が普及したお陰で、英英辞書を使う人が増えてきました。最初のうちは完全には使いこなせなくても、まずは英英辞書をひく癖をつけましょう。そして、どうも今一わかりにくいな、と思ったときは「ジャンプ機能」を利用して、英和辞典を引き、英英辞書の定義と英和辞書の意味を比較するのは、素晴らしい勉強法です。

次に文法については、本書の・・章の「英文法に関する注意点」で触れてありますので、気合いを入れてお読みください。たとえば日本語の「接続詞」につられた”overgeneralization”の例として、「~なので、~だから」の文がそうです。「傘返すから貸してよ」を直訳した”Please lend me your umbrella because I will give it back to you.”という英文は変でしょう。これは英語で考えれば、becauseを使わず、文を切って”I promise I’ll bring it back to you.” となります。それは借りたものは返すのが当たり前なので「から」が理由になっていないからです。日本人はこういった言葉の論理性に鈍感で、「これは私が言っているから間違いないんだ。」という傲慢な発言を聞いてもそれ程違和感を感じない人がたくさんいますが、その直訳である”This is true because I am saying so.”は理由になっていないので変でしょう。英語の発想では”I am positive.”ですんでしまいます。こういったことを訓練によって鍛え、きちんと文脈にあった語彙の選び文法も正確にかつ論理明快な文を書けるようにすることが英文ライティング力UP上非常に重要なことです。

さて、語彙、文法、発想の点から日本語と英語の言語文化の違いを、対象言語学、比較コミュニケーション学的見地から考察すると次のようになります。

日英の発想[言語文化(languaculture)]の違い20

  • 1.英語はS+V+Oのする、働きかける(action)言語である対して、日本語は(S)+V+(C)的、状況描写的[なる的]言語である。
  • 2.英語は「受動態(the passive voice)」よりも「能動態(the active voice)」を用いる傾向が強いが、日本語は「受動態」を用いる傾向が強い。
  • 3.英語は「否定形(negative forms」よりも「肯定形(affirmative forms)」を用いる比率が日本語はより多い。
  • 4.英語は「関係代名詞(relative pronoun)」や「分詞(participle)」などで修飾していくために、1文が日本語よりも長くなることが多い。
  • 5.英語は原則として重要語句(主語+動詞)を先に述べてからそれに修飾語句(modifier)を加えて行くが、日本語は修飾語句を先に述べる。
  • 6.英語は主体「主語(subject)」と客体「述語(predicate)」が明確であるが、日本語ではそういったアイデンティティーが不明瞭であることが多い。
  • 7.英語は「時」の概念(tense)、動作の起こった時間関係が明確であるが、日本語はアバウトである。
  • 8.英語は未来のことを述べるときは「状態表現」を用いる傾向が強いが、日本語ではその発想はない。
  • 9.英語は名詞の可算性(countability)を重視するが、日本語ではその考え方はない。
  • 10.英語は代名詞の「所有格(possessive case)」が明確であるが、日本語はpronominal referenceは省略的である。
  • 11.英語はスタイル・リズム・統一感に重視するが、日本語はそれらにこだわらない。
  • 12.英語は接続詞(connective)の使い方が非常に「論理的」であるが、日本語では「潤滑油的役割」を果たす場合が多い。
  • 13.英語は日本語より多義語言語的(polysemic)である。
  • 14.英語は日本語より文脈依存度が低い(low-context)である。
  • 15.英語は基本原則として「論理性(logic)」を追求しているが、日本語はそうとは限らない。
  • 16.英語はポイント(point)を非常に重視し、1段落に1ポイントを述べるのを原則としているが、日本語はそれに関して厳密ではない。
  • 17.英語は「証明(illustration)」を重視し、ポイントを必ず各段落の中で証明しようとするが、日本語ではポイントを段落内で証明せずに別のポイントを述べることが多い。
  • 18.英語はポイントをgeneralからspecificに述べていくが、日本語はそれほど厳密ではない。
  • 19.英語は「比較の概念」に関して厳密であるが、日本語はそうではない場合が多い。
  • 20.英語は「誇り・名誉」を重視し、「謙遜・謙譲」を表す言い回しや前置きをほとんど使わないが、日本語ではそれらが多い。

1は何度も述べているように、「夜になるとふくろうがやって来る」という状況描写的・なる的和文の直訳は、”When night comes, owls come.”ですが、英語の発想では、”Night brings owls.”と「S+V+O」作用的に表現できます。また、「この問題には頭が痛い」といった状況描写的な日本語も、英語では”This problem gives me a headache.” の「S+V+O+(O)」になります。

2は日本語の「誰にも見つかるなよ。」「寒さに負けるなよ。」が、英語ではそれぞれ”let“を用いて、”Don’t let anybody see you.” Don’t let the winter cold beat you[Brave the winter cold].”とういうふうに「能動態」を用いる点です。また、日本語の「給料をあげてもらったの」は、英語では”I got a raise.”と「能動態」で表現するのが普通です。

3に関しては、日本語の「~しないように」は、in order not toやso as not toの「否定形」を使うより、avoidを用いて、in order[so as] not to hit the carをin order to avoid hitting the car, in order to avoid the collisionのように「肯定形」を使った方が英語らしくなります。英語は概してダイレクトでダイナミック(アクションオリエンティッド)な言語文化を持っています。これに対して日本語は、個人差はありますが、相対的にニュアンス、語気緩和を重視する傾向が強く、メッセージもインディレクトになりがちです。

次に、英語は関係代名詞や分詞を用いてどんどん修飾していけるので、英文が相対的に長くなり、タイムなどの英字紙を見てもわかるように、1センテンスの平均が20語ぐらいで、15語ぐらいから25語ぐらいのレンジになっています。ですから和文を書くときにすぐに文章を切る癖のある人は、「茅ヶ崎時事英語」に見られるような時事的な英文を書くときに苦労するでしょう。

5は、日本語では「昨日、銀座で、十年ぶりに、大学時代に、同じクラブに入っていた友達とね、大学時代のことで、話が盛り上がってね。」という具合に、「修飾語先行型」になっているのでなかなか「動作」が出で来ないのに対して、英語では”I had a lively conversation with~”(私は~した)というふうに「動作先行型」になっているでしょう。

6、7、8、9、10に関しては言うまでも無いでしょう。日本語は”timeless language”とも言えるぐらい時制にアバウトで、修飾語で判断する場合ガ多々ありますが、英語では現在、過去、未来、現在完了、過去完了、未来完了と厳密です。それから未来を表す表現にしても英語は細かいですよ。例えば「委員会は来週の土曜日に開かれる。」の英訳を、”The committee is going to meet on next Saturday.”とすると2つの問題点があります。まず1つは、”be going to”は「予定、意思未来(~するつもり」を表しますが、この文脈では委員会は開くこと決定しているので、will meet, is meeting, will be meeting, is to meetなどを用いる必要があります。もう1つは、next Saturdayとすると今日が金曜の場合だと明日の意味になってしまうので、”on Saturday next week”にする必要がある点です。また、誰かをパーティーか何かに招待したときに、「トムも来ますよ。」という場合や、「来週、私はここに来ません。」などを英語で言うと、”Tom will be there.”, “I won’t be here next week.”のようにgoやcomeの代わりにbe動詞を用いる点です。

代名詞に関しては、英語では「あなたはあなたの宿題をやりましたか?」と日本語感覚ではくどいぐらいが当たり前となっていますが、意味は明確でしょう。

11は本書の文法セクションで説明したとおり、英語はパラレルなど統一感を重視しています。

12に関しては、日本語の「~ですから、だから、~ですが」などが必ずしも因果関係や逆説を表すのではなく、「強調」であったり会話の語気を緩和する「潤滑油」的な役割をしている場合が多いということで、これは英語を発信するときにつられないように注意しないといけません。つられてSo~とやってしまう日本人が非常に多いからです。

13は本書の語彙セクションで詳述してあるようにこの英語の「多義性」を巧みに使えば素晴らしい英文がかけます。実際、洋書、英字紙、洋画などで含蓄があって掴みにくいところや、生き生きと比喩的なところはこの多義性(polysemy)を用いています。

14は文化人類学者によると日本語が世界でもっとも文脈依存度が高い(high-context)と言われていますが、それは日本語コミュニケーションが、主語、代名詞、時制、限定詞、接続詞といった文法的観点から見ても不明確で文脈依存的であるばかりか、メッセージにおいても「風が吹けば桶屋が儲かる」に近いような論理の飛躍が非常に多いために、何を言っているのかin-groupしかわからないといったことがよく起こるからでしょう。

15は言うまでも無いでしょう。英語が論理性を重んじるのは原点が現代サイエンス・学問の礎となっているAristotelianism(アリストテレス哲学)の理路整然性とアーギュメンテーションなので、言葉や理屈を重視せず対人関係における調和を重んじる日本古来の仏教&儒教文化とは対立するのは当然で、伝統的な日本人なら相当なカルチャーショックを乗り越えないと論理性が板についてこないでしょう。

16、17に関しては、本書X章の論理的な英文を書く技術のセクションで詳しく述べていますが、英語は”logic”つまり”a set of sensible and correct reasons, or reasonable thinking”を追及しており、それにはずれると、”It doesn’t make sense.”となって、tolerance for illogicality and ambiguity”が低いと言えます。これに対して、人間関係や人情の機微を重視し、”unconfrontationality”つまり、対立を避けようとする日本文化では、論理性はあまり重視されない傾向があります。これは特に昔の世代に顕著に見られる現象で、logicalでdirectでconfrontationalな英語の言語文化と対照を成しています。英語の論理性に関しては私の前著「英語で意見を論理的に述べる技術とトレーニング」においても、その重要性とコツを紹介しています。

18に関しては、例えばマイカーの使用に対して、公共の交通機関のメリット、デメリットを述べるときに、日本語だと「公共の交通機関は安全である」と言ってしまいますが、これだとマイカー使用の場合は全く安全ではない意味になってしまいまずいので、「~は~より安全である」必ず比較の概念で表現する必要があります。こういった比較を忘れるのは、日本人がエッセイを書くときに母語の干渉を受けてよくしがちなことです。

19に関しては次の例がそうです。「ドラッグは社会にとっと最も危険である」という意見の理由として、「それは若者に悪影響を与える」」と言うと、ロジックで考えると、「若者以外には悪影響を与えない」という意味になってしまってまずいので、「それは人間に悪影響を与える」と述べてから、「そしてそれは特に若者に対してはそうである」と加える必要があります、英語では、”~especially young people”と付け加えていくわけですが、これも日本語の感覚につられてそうするのを忘れる日本人が多いようです。

20に関しては、前述の「僭越ながら」に表されるように、謙譲と人間関係における調和を重んじる日本語は「手前味噌になりますが」、「こんなことを言うのもなんですが」、「お言葉を返すようですが」のように前置きが言う場合が多く、英語ではその後者の英語版”With due respect~”はあるものの、日本語に対して非常に少ないので、日本語感覚で見るとややぶっきらぼうな印象を与えるかもしれませんが、西洋人から見ると「早く本論を言え」という具合になります。ちなみに私はこの謙譲が嫌いなので「拙著」と言っていません。

以上、日本語と英語の発想の違いを17項目述べてきましたが、いかがでしたでしょうか。こういった日英の言語文化の違いを念頭に入れて英文和文を比較研究すると同時に、ライティングや日英翻訳に励めば、皆さんはより効果的に発信力をUPさせることできるでしょう。また真の異文化間コミュニケーションや”borderless English”をエンジョイできるようになると信じています。

実践問題

さてそれでは今度は皆さんに、本書で今まで述べて来たことを身につけて頂くために、実践問題にチャレンジして頂きましょう。練習問題は3パートに分かれており、Part 1 は難関の大学入試問題レベル、Part 2はビジネスレター、Part 3は社会問題の英文ライティング&和文英訳トレーニングです。最初は絶対に答えを見ずにトランスレーションにトライして下さい。それでは頑張って参りましょう。